東工大,機械学習で高分子コーティング膜効率設計

東京工業大学の研究グループは,バイオセンサー,インプラント,ステント,人工臓器,人工心肺など医療材料のコーティング技術の一つとして注目されている高分子ブラシコーティング膜の化学構造および物理構造(膜厚・密度)から,機械学習に基づき,血液成分の吸着量を予測する新たな手法を確立した(ニュースリリース)。

バイオセンサー,インプラント,人工関節などの医療材料において,さまざまな場面で防汚特性は非常に重要な役割を果たす。バイオセンサーでは,タンパク質,脂質,糖類などの生体分子の非特異的吸着がセンサーの選択性・感度に悪影響を及ぼす。

また,血液と接触するバイオデバイスでは,血中成分の意図しない吸着が血栓症などの有害な副作用の引き金となる。これらを防ぐための策として,防汚特性を有する高分子コーティング膜が用いられている。

しかし,優れた防汚特性を有する高分子コーティング膜の効率的な開発は未だに実現していない。防汚特性と材料の化学的・物理的構造の関係性が定量化されていないことが原因の一つだという。これまで求める材料を設計するためには,研究者の経験に基づく試行錯誤やセレンディピティに頼らざるを得なかった。

研究ではまず,5種類の単量体(モノマー)から,厚みと分子密度の異なる高分子コーティング膜を合成した。そして,高分子コーティング膜の化学構造(C-H結合の割合,厚み,分子密度など)と特性(疎水性,実効電荷,分子量など)から,血液成分の吸着量を予測するランダムフォレストによる回帰モデルの構築に世界で初めて成功した。

ランダムフォレスト回帰から得られた各パラメータの重要度評価に加えて、ピアソン相関係数[用語4]を照らし合わせることで、化学構造と特性と生体分子の吸着量の相関を定量的に示した。

従来,生体材料(バイオマテリアル)の開発は試行錯誤的なアプローチによって行われてきた。今回確立した機械学習を用いる材料設計の手法は,材料開発において,大幅な低コスト化と時間短縮をもたらし,結果として持続可能な材料開発の実現にも貢献するとする。

また,バイオマテリアル分野では機械学習による材料設計の例は非常に少なかった。計算科学を用いた大規模なデータセットの構築が出来ないことが主な理由として挙げられるが,この研究では,適切なアルゴリズムとパラメータの選択によって,小規模のデータセットでも機械学習による材料設計が可能である事を示した。

研究グループは今後,より実用的な生体材料の設計および開発に貢献していきたいとしている。

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