京都大学,東京工業大学,大阪大学,東北大学は,NaCl(塩化ナトリウム)に代表される岩塩型構造と,CaF2(フッ化カルシウム)に代表される蛍石型構造の2つの構造ユニットを共存させ,制御できることを発見した(ニュースリリース)。
NaClに代表される岩塩型構造とCaF2に代表される蛍石型構造は,無機化合物において,最も基本的な結晶構造。また,岩塩層を持つ化合物や蛍石層を持つ化合物も数多く知られている。
例えば,蛍石型構造と似た構造を持つ物質としては,高効率で安定な光触媒材料として,近年盛んに研究されているビスマス酸塩化物という物質群がある。これらの物質は,ビスマス(Bi)と酸素(O)からなる蛍石層(Bi2O2層)と塩素層などが積層した層状物質で,層の組み合わせや積層の順序によりさまざまな物質群が合成できる。
Bi2O2層はBiが2列分存在しているため二重(n=2)蛍石層と言われるが,最近研究グループでは蛍石層の厚みnを増やした三重(n=3)蛍石層を有する光触媒を開発した。これは蛍石層の厚みnを制御することで,さらなる物質開発を示唆するものだが,現状報告されているビスマス酸塩化物ではn=3が最大で,Bi–O層のバリエーションは非常に限られていた。
研究グループは,光触媒として知られていた酸塩化物Bi12O17Cl2の構造解析を行ない,蛍石型構造に似た構造を持つ蛍石層(蛍石ユニット)の中に部分的に岩塩型構造に似た構造を持つ岩塩ユニットが内包されることで,波打った構造を有することを見出した。
加えて,フッ素を挿入する反応を行ない,岩塩ユニットと蛍石ユニットの複合パターンを変化させ,構造を平坦化させることで光触媒活性が最大6倍と大幅に向上した。
研究グループは,長年謎だったBi12O17Cl2の構造が解明されたことで,この物質の光触媒としての物質開発がさらに加速することが期待できるほか,Bi2O2蛍石層は誘電材料や光学材料など,今後応用していく上でも様々な重要な物質の構成要素であるため,光触媒材料に留まらず材料科学分野全体に示唆を与えるとしている。