大阪公立大学の研究グループは,バイオマス由来化合物であるピルビン酸に二酸化炭素を結合させ,脱炭酸リンゴ酸脱水素酵素とフマル酸ヒドラターゼの2つの生体触媒を使って,不飽和ポリエステル樹脂の原料であるフマル酸の合成に成功した(ニュースリリース)。
地球温暖化による環境問題の顕在化かつ深刻化は,二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスが主たる原因となっている。二酸化炭素削減を目指して広く研究されている人工光合成では,二酸化炭素を一酸化炭素やメタノール等,炭素1つの有用物質や燃料となりうる物質に還元するものが主流。
一方,天然光合成では,二酸化炭素は直接還元されず,有機化合物に結合した後,ブドウ糖やデンプンに変わっていく。そこで,この天然光合成の流れを模倣し,減らすべき二酸化炭素を原料として有機化合物に結合させ,プラスチック製品等の耐久性のある素材に変えることができれば,二酸化炭素削減へ貢献できると考えた。
一例として生分解性高分子ポリブチレンサクシネートはフマル酸を原料として作られているが,合成原料は石油由来であり,二酸化炭素やバイオマス由来化合物から作る方法が望まれている。
研究グループは,脱炭酸リンゴ酸脱水素酵素(ME)を用いて二酸化炭素をバイオマス由来化合物であるピルビン酸へと結合させ,L-リンゴ酸を生成。その後,フマル酸ヒドラターゼ(FUM)を用いて,L-リンゴ酸に脱水反応を連結させることでフマル酸の合成を実現した。これにより,25時間の反応でピルビン酸の約14%をフマル酸に変換できた。
研究グループは,すでに人工光合成技術への応用として,光エネルギーを用いたフマル酸合成の研究を始めているという。この技術が達成できれば,光エネルギーを用いて二酸化炭素を原料とする高分子を合成する,新たな人工光合成系を作り出すことができるとしている。