東北大学の研究グループは,画像計測と音響計測の2つの異なる同時計測データに対して,圧縮センシングと呼ばれる少ない観測データから元の情報を復元する信号処理を適用することで,撮影速度の向上と計測空間の大幅な拡張を実現できる時空間超解像計測技術を開発した(ニュースリリース)。
航空機やロケットのエンジン排気流は,超音速ジェット噴流と呼ばれ,音速を超える流れから強い騒音が発生する超高速かつ複雑な流動現象。強い騒音を伴うことから,振動による構造物破壊や騒音公害の原因となるため,その発生メカニズムの解明が望まれている。
超高速な物理現象を,高精細かつ連続的に撮影できる高速度カメラは,物理を解き明かすための強力なデバイスの1つだが,最新鋭の高速度カメラをもってしても,超音速ジェット噴流の流動現象を十分な撮影速度で撮影することは難しい。
そこで研究グループは,画像計測と音響計測の2つの異なる同時計測データに対して,圧縮センシングと呼ばれる少ない観測データから元の情報を復元する信号処理を適用することで,撮影速度の向上と計測空間の大幅な拡張を実現できる時空間超解像計測技術を開発した。
画像計測は空間的な分布を撮影できる一方で,その撮影速度は前述のように十分ではない。対照的に,音響計測で使用するマイクロフォン(点センサ)は,空間上の1点のみの計測に限られるが,画像計測の数十倍以上の計測速度がある。
この技術は,時間解像度は高いが空間解像度が低い点センサと,空間解像度は高いが時間解像度が低い高速度カメラの撮影画像を,低次元モデルで融合し,時間と空間の解像度を両立した画像を再構成するもの。
粒子画像速度計測法による速度場の可視化画像を4kHz(250μs間隔)で撮影し,同時にマイクロフォンによる音響データを200kHz(5μs間隔)で計測したデータに低次元化を施し,両者の関係を少数のデータで表現できる,スパースな(疎らな)線形回帰モデルを構築することで,オリジナルの50倍となる200kHzの撮影速度で速度場を再構成することに成功した。
この結果は一例であり,高速度カメラと点センサの計測速度比に依存して,さらなる撮影速度向上も可能だという。研究グループは,この技術には汎用性があり,種々の可視化手法と点センサを組み合わせることで,流体力学に限らず様々な分野の超高速・複雑現象の理解を飛躍的に発展させることが期待できるとしている。