三菱電機は,レーザー光線を利用した宇宙光通信機能と,レーザー光線の受信方向を検出する受信方向検出機能を統合した宇宙光通信用光受信器を,地上光ファイバー通信などで使用される汎用的な1.5μm帯において,世界で初めて開発したと発表した(ニュースリリース)。
電波を利用した衛星通信は,データ容量やアンテナサイズなどに制約がある。今後,防災・減災に向けて,より早く高精度に現場状況を把握するために,大容量・高速な宇宙光通信が求められている。
一方,宇宙光通信は,電波に比べて約1000分の1の広がり角で非常に狭いレーザー光線を使用するため,高速で移動する人工衛星との間で互いにレーザー光線の進行方向を高精度に合わせる専用のセンサーが必要で,受信器のサイズが大きくなる課題があった。
同社は今回,宇宙光通信機能と受信方向検出機能を統合することで,光受信器の小型化を実現するとともに,レーザー光線の位相を利用したコヒーレント光通信を可能とした。
具体的には,レーザー光線を受信し電気信号に変換・出力する光電変換素子を4分割することで,受信したレーザー光線の角度ずれを,分割後の各素子の出力信号の強度の比較で高精度に検出。これまで必要だった受信方向を検出する専用センサーが不要となった。
また,受信したレーザー光線の位相変化の検出数を0度と180度の2種とする方式から,0度,90度,180度,270度の4種にしたコヒーレント方式の宇宙光通信が可能な光回路を開発。同じ周波数帯域で位相変化検出数が2種の光通信に比べて2倍,電波による通信と比べて10倍以上の通信容量・高速化を実現した。
コヒーレント方式は,微弱な光でも通信が可能であるため,同じ送信レーザー光線の強度で,より遠くまで通信が可能。また,太陽光など背景光の影響を受けにくい性質を持つため,背景光に妨害されにくい通信を実現したという。
さらに,受光方向検出機能を備えた光電変換素子により専用のセンサーが不要。5cm×5cmの小型のガラス基板上に光回路を形成し,光電変換素子2個を1枚の基板に実装して,これらを1モジュール内に構成する技術を開発。これにより同社従来開発品と比較して4分の1以下の体積10cm3の小型かつ軽量な宇宙光通信用光受信器を実現した。
これにより宇宙光通信において,電波による通信に比べ10倍以上の大容量化・高速化,長距離通信を実現するという。また,レーザー光線は電波に比べてアンテナサイズも小型化できるため,ビル間などの光ファイバーを敷設しにくい場所や,災害時,発展途上国や砂漠などで,移動体への搭載や既存の施設内への設置も容易になるとしている。