北大,低侵襲の留置が可能なX線マーカーを開発

著者: sugi

北海道大学の研究グループは,IGRT(画像誘導放射線治療)に用いられる植込み型病変識別マーカ(X線マーカー)として,骨充填剤であるバイオペックス-R(HOYA Technosurgical製)に金ナノ粒子を均一に複合化させた粉末を作製することに成功した(ニュースリリース)。

放射線治療では,腫瘍部のみに放射線が照射できるシステムが求められているが,人間は呼吸により臓器の位置が動くため,そのままでは腫瘍部のみに放射線を照射することは難しい。それに対し,IGRTは,患者の画像情報から呼吸などによる臓器位置の移動を常に補正し,腫瘍部位のみに正確に放射線照射する技術。

この患部の位置補正には,腫瘍近傍に生体親和性が高く,原子番号が大きくX線視認性の高い金を留置するが,従来,このX線マーカーとして1.5‒2mmの金粒子が使われていた。これを腫瘍患部付近に導入するためには外径が約2‒2.5mm程度のカテーテルを用いる必要がある。

研究グループは,バイオペックスの分散液中において,エタノールを用いて金イオンを還元し,バイオペックスと複合化した金ナノ粒子を調製した。これを遠心分離・乾燥させ赤色の粉末として回収した。この複合化粉体をバイオペックスの固化に用いる練和液に分散させたのち,人体を模擬したゲルに様々な太さの注射針を使って導入した。

ゲル内に注入した混合液は固体の塊となり,数mmの粒子としてゲルから取り出すことができた。このことは,バイオペックス-金ナノ粒子複合体粉末が,人体内でも固化し,体内に長くとどめておくことができることを示す。

得られた粒子は含んでいる金のためにX線の透過性が低く,X線透過像でその位置を確認することができる。人体を模擬した15cmのアクリル板を通しても充分認識でき,従来の2mm程度の金粒子を用いた場合とほとんど変わらなかった。よって,今後外径が0.81mmの注射針で金マーカーを体内に導入できれば,非常に低侵襲とすることができる。

研究グループは今後,相対的に金ナノ粒子の量を増やし,より少容量のバイオペックス-金ナノ粒子複合体の導入により,視認性が高いマーカーとなるよう設計していく。また,ナノ粒子の大量合成法の開拓を行なって実用化に向けて研究を実施したいとしている。

さらに細い針で金マーカーを体内に導入できるよう,得られる金ナノ粒子などの分散性を高めるほか,人体内の金の固定化手段についても検討を重ねていくという。

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