三菱電機は,溶接用ワイヤーをレーザーで溶融し,三次元構造を高品質に造形するワイヤー・レーザー金属3Dプリンター「AZ600」2機種(2kW/4kW)を3月1日に発売する(ニュースリリース)。
従来の金属3Dプリンターの材料供給方式は,粉末方式とワイヤー方式の2種に大別される。
粉末方式は,複雑で高精度な造形が可能だが,材料の保管,環境への影響,材料コストなどで課題があった。ワイヤー方式においても,熱源にアーク放電を用いる場合が多かったため,素材の熱ひずみや熱影響層が大きく,高精度な造形が困難という課題があった。
同社は今回,ワイヤー方式においても,熱源の制御性に優れたレーザー光を使用することにより,造形状態に応じた適切な入熱制御を容易にし,ワイヤー材によるメリットと造形精度の両立を可能にした。独自のきめ細かな入熱制御により,アーク熱源では実現困難な複雑な三次元構造も高精度に造形し,切削加工では原理的に不可能な中空球などの造形も可能。
また,世界で初めてワイヤー送給やレーザー出力などの加工条件と軸移動をCNCで協調制御することで,三次元構造の高精度かつ高品質な造形を実現する。造形状態を各種センサーで検知した信号に基づき,軸指令値とワイヤー送給量およびレーザー出力の指令値を最適な値に協調制御することで,造形プロセスの安定性を確保し,安定的かつ高品質な三次元造形が可能になるという。
複雑な溶接経路を空間同時5軸制御することで,従来は熟練者の手作業に頼っていたTIG溶接の代替が可能。溶接品質の安定化,溶接時間の短縮および省人化に貢献する。また,最終形状に近い状態に仕上げるニアネットシェイプ工法の採用で,材料の総形削りによる従来の製造工程と比べ加工時間と廃棄材料を約80%削減し,省エネルギーと省資源化を実現するという。
自動車や船舶,航空機の部品製造における金型やタービンブレードなど,過酷な環境で使用される消耗部品の欠損部分に積層造形をほどこすことで,部品の長寿命化やランニングコストの削減にも寄与するとしている。また,同社ではこの製品による受託造形サービスも開始する。