横市大ら,X線で発生するタンパク質の欠陥を観測

横浜市立大学,高輝度光科学研究センター(JASRI),広島大学は,放射光X線を照射した際に発生するタンパク質結晶中の欠陥の観測に初めて成功した(ニュースリリース)。

昨今の感染症をはじめとして,病気の原因解明や創薬に重要なタンパク質の構造に関する研究が盛んに行なわれている。

一般に,タンパク質の構造を知るためには,タンパク質の結晶を作製し,X線を用いた解析が行なわれる。その解析の精度は使用する結晶の品質に左右されるため,高品質化を目指した研究が進められている。しかし,たとえ品質の良い結晶が得られても,X線の照射によって結晶やタンパク質分子にダメージが入ってしまい,解析の精度が低下することが問題だった。

また,これまで,タンパク質分子のダメージに関する研究報告があったものの,結晶のダメージに関する研究は例がなかった。その理由として,結晶中の欠陥が観察可能な,標準となる高品質な結晶が得られていなかったこと,もう一つは欠陥を観察するために必要な大型の結晶が得られていなかったことがある。

研究では,過去に本研究グループが報告した究極の品質を誇る大型のタンパク質結晶を用いて,X線照射の効果を明らかにした。具体的には,大型放射光施設SPring-8において,酵素タンパク質のひとつであるグルコースイソメラーゼ結晶と鶏卵白リゾチーム結晶に高輝度X線を照射した。

X線の照射の効果を明らかにするため,SPring-8とKEK(高エネルギー加速器研究機構)「フォトンファクトリー」において,X線トポグラフィ測定を行なった。すると,X線を照射した光路に沿って,欠陥(転位)が発生していることがわかった。

これまで,タンパク質結晶に限らず,金属や半導体結晶に電子線や粒子線などのX線よりもエネルギーの大きな放射線で欠陥が発生することは知られていた。研究では,タンパク質結晶にX線を当てるだけで欠陥が発生することを初めて観測した。

さらに,X線の照射量を変化させると,欠陥の発生を防ぐことができることも分かった。転位論に基づいて欠陥のエネルギー計算を行なうと,X線の照射量と欠陥発生の有無に良い相関が得られ,照射したX線の合計量で欠陥の発生が決まるのではなく,単位時間あたりの照射量(レート)が欠陥の発生を支配していることを示した。

つまり,同じ照射量でも瞬間的に打ち込むと欠陥が入り,緩やかに照射すれば欠陥は入らないということがわかり,X線の照射量を制御することで,格子レベルで結晶のダメージを制御できることが分かった。

研究グループは,この成果はX線に由来した欠陥の発生機構の理解に新たな知見を与えるものだとしている。

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