北大,青色LEDでクロスカップリング反応を効率化

北海道⼤学の研究グループは,青色LEDの光によって駆動する画期的なクロスカップリング反応を開発し,安価な銅で構成される分子触媒を用いて有用化合物を効率よく合成することに成功した(ニュースリリース)。

持続可能な社会の実現に向けて,近年,光を利用した化学反応が盛んに研究されている。

しかし,従来の方法の多くは,人体に有害な紫外光や光を効率よく吸収するための高価な貴金属の光触媒を用いる必要があった。また,クロスカップリング反応は私たちの身の回りの化成品を合成する上で不可欠な技術だが,このクロスカップリング反応においても,多くの場合パラジウムなどの貴金属を用いる必要があった。

研究グループは,地球上に豊富に存在し入手容易な銅(Cu)を中心とする触媒を設計した。今回開発された触媒は中心の銅と,それと結合する有機分子(配位子)から成る。配位子は触媒が直接光を吸収するように緻密に設計した。

実際の反応では,まずこの触媒と出発原料の一つが光の作用によって結合を作り,化合物が生じる。これがさらに光を吸収することで,中心金属から配位子への電荷の移動(MLCT と呼ばれる)が起こり,分離した電荷を持つ化合物(内部に正電荷と負電荷を持つ化合物)を生じる。この分離した電荷を持つ化合物は,電荷を持たない化合物とは異なり高い反応性を示すため,クロスカップリング反応が効率よく起こるという。

この銅触媒を用いてクロスカップリング反応を行なった。出発原料である2種類の有機化合物と銅触媒を有機溶媒に溶かした溶液をマイナス40度に冷やしながら,市販の青色LEDライトの照射下で12時間かき混ぜたところ,原料の2種類の化合物が結合した新たな分子が生じた。

その化学収率は90%に達するとともに,1000対1を超える極めて高い比率で鏡像体の一方が選択的に得られた。また,出発物質を変えることで,これまでの方法では合成できなかった様々な新規化合物を高い鏡像体比で合成することにも成功。コンピューターによる化学反応シミュレーションにより,想定しているメカニズムもサポートされた。

この反応は,銅触媒が光を直接吸収することで駆動するため,外部の添加剤を必要とせず,コストや地球環境の観点から優れるもの。この技術を活用することで,従来の貴金属に頼った化学反応を刷新し,持続可能な社会の実現に⼤きく近づくことが期待できるという。

研究グループは今後,開発したクロスカップリング反応を利用し,様々な化合物を合成するとともに,それらの医薬品や光電子材料としての応用を検討していくとしている。

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