東京医科歯科大学とソニーは,潰瘍性大腸炎内視鏡画像に基づくコンピューター画像支援システム(DNUC; deep neural network system based on endoscopic images of ulcerative colitis)を開発した(ニュースリリース)。
潰瘍性大腸炎は慢性の炎症性腸疾患だが,近年,病気の炎症そのものをコントロールすることが可能となった。
そのためには「内視鏡的な寛解」と「組織学的な寛解」の評価が必須だが,その評価は医師の主観に基づくため,相違が生じることが問題だった。さらに「組織学的な寛解」評価には生検に伴うコストや合併症のリスクが避けられない。
そこで研究グループは,深層学習を用いることで,潰瘍性大腸炎の内視鏡画像に基づくコンピューター画像支援システム(DNUC)を開発し,その精度を前向きに検証することを目的として以下の3つの研究を行なった。
①内視鏡動画に対するAIシステムの作成
下部消化管内視鏡の画像と粘膜生検からAI学習用のデータを収集し,UCEISスコアとGeboesスコアを専門医により点数付けした。このデータセットを学習データとして用い,ソニーとDNUCを開発した。入力された画像からDNUCはUCEISスコアと「内視鏡的な寛解」と「組織学的な寛解」を出力する。
②AIの患者予後予測能の評価
上記の患者を対象に,下部消化管内視鏡後の臨床経過(予後)を1年検討した。するとDNUCが「内視鏡的な寛解」および「組織学的な寛解」と評価した患者では,有意に「再燃」「ステロイド使用」「入院」「手術」の発生率が低いことが分かった。また,DNUCの予後予測能をハザード比で算出すると,すべての予後について,潰瘍性大腸炎専門医と同等だった。
③DNUCの動画への適応
開発したAIシステムを内視鏡動画へ適応し,動画からリアルタイムに適切な静止画を選択するアルゴリズムはソニーと開発した。その結果,内視鏡装置とDNUCが搭載されたパソコンをつなぐことで,「リアルタイムな組織学的評価」と「一定の内視鏡スコア算出」が可能となった。
多施設前向き研究で精度を検証した。「リアルタイムな組織学的評価」について,DNUCは81.0%の生検組織について病理結果を予測可能で,その感度と特異度はそれぞれ97.9%と94.6%だった。「一定の内視鏡スコア算出」についても,専門家とDNUCの間の相関は0.927と非常に高い一致を示した。
研究グループは今回の成果について,①AIにより潰瘍性大腸炎専門医と同等の一定の内視鏡評価が可能となった,②AIにより粘膜生検を採取しなくても組織学的評価が可能となった,と評価している。