東工大ら,スピン軌道トルク磁気抵抗メモリを作製

東京工業大学と米カリフォルニア大学ロサンゼルス校は,トポロジカル絶縁体と磁気トンネル接合(MTJ)を集積したスピン軌道トルク磁気抵抗メモリ(SOT-MRAM)素子の作製と,比較的高いトンネル磁気抵抗効果による読み出しおよびトポロジカル絶縁体による低電流密度の書き込みの実証に成功した(ニュースリリース)。

SOT-MRAMは,スピンホール効果による純スピン流を用いて,高速で書き込みができる次世代の不揮発メモリ技術。

書き込み電流と電力を下げるためには,スピンホール効果が強いトポロジカル絶縁体を用いることが有望だが,トポロジカル絶縁体と磁気トンネル接合との集積技術はこれまで確立されていなかった。

研究グループは,SOT-MRAM素子の作製にあたって,分子線エピタキシャル結晶成長法を用いて製膜した(Bi,Sb)2Te3トポロジカル絶縁体,または工業生産に適するスパッタリング法を用いて製膜したBiSbトポロジカル絶縁体を下部電極に配置した。

さらにトポロジカル絶縁体と似た結晶構造を持つRu(5nm)を中間層に,その上にCoFeB(2.5nm)/ MgO(2nm)/ CoFeB(5nm)のMTJを製膜した。次に,磁性層のCoFeBを結晶化させるために,250℃~300℃の温度で熱処理を行なった。最後に,3端子のSOT-MRAM素子を作製した。

実際のSOT-MRAM素子サイズは4×8μm2~100×200nm2 と小さい。スパッタリング法のみで作製したBiSbトポロジカル絶縁体-磁気トンネル接合のSOT-MRAM素子(1×3μm2)は,トポロジカル絶縁体を集積した磁気トンネル接合を250℃で熱処理したにもかかわらず,90%という比較的高い抵抗変化を達成した。また,スピン軌道トルクによる低電流密度による書き込みにも成功したという。

この実証実験により,トポロジカル絶縁体と磁気トンネル接合を集積でき,読み出しと書き込みの原理動作ができることを初めて示すことができたとする。

今回の成果を受けて研究グループは,今後は産業界を巻き込んだ超低消費電力SOT-MRAMの研究開発が加速されるとしている。

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