日本電気硝子は,5G通信に用いられる部品やデバイスに適した誘電正接の低いLTCC用材料の継続的な開発により2020年に製品化したラインナップの特性を飛躍的に向上させ,業界最高の特性達成に成功したことを発表した(ニュースリリース)。
5G通信は,高速・大容量,低遅延通信,多数同時接続が可能になる通信技術で,その通信には,ミリ波領域といわれる28~40GHzの高い周波数が利用されており,信号を処理する部品やデバイス(回路基板,フィルター等)にはさまざまなLTCC基板が使われている。
LTCCとはガラス粉末とセラミック粉末の複合材料で,1000°C以下の低温で焼結でき,電気伝導率の高い銀導体と同時焼結し,多層化することにより複雑な高周波部品を製造できるという。
これらの部品やデバイスでは周波数が高くなるほど,また誘電正接が大きくなるほど信号の減衰が大きくなるため,ミリ波領域において,より効率的な通信を実現するためには低誘電正接の材料を用いたLTCC基板によって信号の減衰を抑制し,低損失化することが必要になる。
誘電正接は誘電体が分極するときのエネルギーの指標で,誘電正接が小さいほど,電磁波のエネルギーが熱に変換されにくくなり信号の減衰が抑制されるという。
同社は,昨年開発・製品化した低誘電正接を特長とする3タイプ(高膨張,高強度,低誘電率)のLTCC用材料に対し,市場から寄せられた課題を克服。特に高膨張タイプにおいては,その誘電正接が目標としていた0.0010以下を大幅にクリアし,現行品比75%低下となる業界最小の低誘電正接0.0003を達成したという。
また高強度タイプについても,現行品比57%低下となる誘電正接0.0006まで特性を改善。低誘電率タイプにおいては,実用化へ向けて課題となっていた強度を130MPaから150MPaに約15%向上させ,比誘電率4未満の材料としては業界最高の強度を達成したとしている。
同社はさまざまな電子デバイス向けの特殊ガラスを製造・販売しているが,今回開発した製品で新たな市場ニーズに対応し,次世代の通信機器の性能向上に貢献していくという。