名大ら,ポリマー半導体の性能を20倍以上向上

名古屋大学,広島大学,京都大学,東京大学,物質・材料研究機構,高輝度光科学研究センターは,ポリマー半導体の化学構造を少し組み替えるだけで,電荷となるπ電子が主鎖に沿って高度に非局在化し,半導体性能の一つである電荷移動度が20倍以上向上することを発見した(ニュースリリース)。

ポリマー半導体は,次世代のプリンテッドデバイスへの応用が期待されている。しかし,デバイスの性能を左右する電荷移動度はシリコン半導体などに比べて著しく低くいという課題があった。

ポリマー半導体には,ポリマー主鎖に沿った「主鎖内」とポリマー主鎖同士の重なりを介した「主鎖間」の2つの電荷輸送パスがある。従来は,律速である「主鎖間」の電荷輸送性を改善することが材料開発の指針だったが,研究の進展とともに「主鎖間」の電荷輸送性の改善だけでは電荷移動度を向上させることは難しくなっていた。

今回,研究グループは,ポリマー半導体「PBTD4T」のBTD部分を,SPという化学構造に置き換えた「PSP4T」を合成した。PBTD4TとPSP4Tは互いに化学構造が少し組み替わっただけの構造異性体の関係にある。

これらのポリマーを半導体層とする有機トランジスタを作製したところ,PSP4Tは2.5cm2/VsとPBTD4Tの0.1cm2/Vsに比べて一桁以上高い電荷移動度を示した。ポリマー薄膜のX線構造解析を行なったところ,PBTD4TとPSP4Tでは,ポリマー主鎖間の距離や秩序は同程度であり,主鎖間の電荷輸送性も同程度であると推測された。

そこで,分子レベルの構造を調べるため,モデル化合物を用いてX線構造解析を行なった。ところ,PSP4TはPBTD4Tに比べて,ポリマー主鎖上にあるπ電子が高度に非局在化していることが明らかとなった。

さらに,薄膜の光熱偏向分光測定を行なったところ,PSP4Tは PBTD4Tに比べて,電荷が主鎖内を流れやすい構造を持っていることが明らかとなった。

第一原理計算によりポリマー主鎖のバンド構造を計算し,それに基づいて主鎖内電荷移動度を算出したところ,PSP4TはPBTD4Tよりも最大で30倍も高い値を示し,これまでに報告されたポリマー半導体の中でも最高レベルの性能であることが示唆された。

これらの実験的および理論的結果から,PSP4TがPBTD4Tに比べて顕著に高い電荷移動度を示したのは,主鎖内の電荷輸送性が著しく向上したことによると結論づけた。研究グループは,ポリマー半導体の飛躍的な電荷移動度向上に向けた新たな分子デザイン手法を示す非常に重要な成果だとしている。

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