東京農工大学の研究グループは,牛のAAアミロイドーシスを迅速に診断するための新しい技術を開発した(ニュースリリース)。
アミロイドーシスは,生体由来のタンパク質の誤った折りたたみによって生じる「アミロイド」が様々な組織に沈着することによって引き起こされる疾患グループであり,アルツハイマー病(脳Aβアミロイドーシス)などが知られている。
アミロイドは,クロスβシート構造を持っているという点で正常なタンパク質と一線を画しており,それによって消化耐性や伝播性など,様々な特性を有している。
現在,アミロイドーシスの診断には病理組織学的手法が利用されている。ただし,これらの方法には「検体の観察による正確な診断には特定の専門知識が必要」「診断までに時間を要する」など様々な制限がある。
そこで研究グループは,従来の検出の欠点を克服することを目的として,牛のAAアミロイドーシスを検出するための新しい方法の開発を試みた。
研究グループはまず,ニワトリやウズラのアミロイドが肉眼でオレンジ色を呈することに着目し,アミロイドには通常のタンパク質にはない光学的特性がある可能性を見出した。一方,ウシのアミロイドは肉眼では呈色しないため,その光学特性が蛍光であるという仮説を立てた。
この仮説を立証するため,研究グループは牛の肝臓から抽出されたAAアミロイドについて,励起波長,蛍光波長,蛍光強度を3次元情報として視覚化する解析法蛍光指紋解析を行ない,AAアミロイドが実際に特定の自家蛍光パターン(蛍光指紋)を持っていることを明らかにした。
また,研究グループは抽出物だけでなく,肝臓ホモジネートからもアミロイド特異的な蛍光を検出できることを見出した。さらに,蛍光の検出法をより標準的なものにするため,主成分分析を用いて蛍光指紋データを処理し,アミロイドの有無を判定するモデルを開発した。
蛍光指紋解析は食品成分や水質調査などに使用されているが,臨床病理学の分野でこの技術を使用した研究はほとんどなかったという。蛍光指紋分析は特別な前処理を必要としないため,サンプルを迅速に採取できる。
研究グループは,こに技術が将来,アミロイドーシスのより簡易的で迅速な診断ツールの開発につながることが期待されるとしている。