九州大学,名古屋大学,東京大学は,新たに開発した小型連続震源装置と,光ファイバー自体を地震計として利用する技術(DAS)を用いて,これまでにない高い精度(0.01%以下の変化を検出)で,連続的にCO2貯留層をモニタリングするシステムを構築した(ニュースリリース)。
「CO2地中貯留」は,天然ガスや石油などが分布している地層にCO2を貯留する。短期間で大量のCO2を削減できると言われるこの手法が,地球温暖化対策として注目を集めている。
国際エネルギー機関(IEA)は,地球の気温上昇を1.5度以内に抑えるためにCO2回収・貯留(CCS)で約15%のCO2を削減する必要があるとしている。つまり,CCSはCO2を削減する上で現実的なアプローチと考えられている。
ただし,IEAのシナリオを実現するためには,世界中の約6000箇所で大規模なCO2貯留を行なう必要がある。日本周辺の海域にもCO2貯留サイトが分布するようになるかもしれない。その際,広域に分布する複数のCO2貯留サイトをモニタリングしてCO2の漏洩や地震を防止し,安全を担保する必要がある。
これまで一般的に用いられているモニタリング手法「時間差地震探査」では,1回のモニタリング調査に1億円単位のコストがかかる。そのため,モニタリングを繰り返し実施し,貯留CO2の挙動を連続的に捉えることは困難で,急なCO2の漏洩などに対応できないおそれがあった。
このシステムで広域に分布する複数のCO2貯留サイトを連続的にモニタリングできるようになるため,急なCO2の漏洩にも対応できると考えられるという。
また,小型連続震源装置からのモニタリング信号が,約80km離れた観測点(地震計)にも到達することを実証した。さらに,長大な海底光ファイバーケーブル自体を地震計として扱い,小型連続震源装置からの信号の検出にも成功した。
そのため,海底光ファイバーケーブルを地震計として活用すれば,海域に地震計を設置する必要がなくなるため,モニタリングの低コスト化も実現できるという。さらに,このモニタリングシステムは,地熱開発の貯留層のモニタリングにも成功したとしている。