京都大学の研究グループは,緑内障の手術である線維柱切開術眼内法について,術前の前眼部OCTA(OCTアンギオグラフィー)深層血流画像の血管密度が低いほど,手術成功となることが多く,また高い眼圧下降率が得られることを発見した(ニュースリリース)。
日本の中途失明原因一位の疾患である緑内障の,唯一確立された治療方法は眼圧を下げることであり,眼圧上昇の原因は主に房水流出の障害となっている。房水流出路のイメージング方法として,前房内に造影剤を注入する房水造影などがあるが,侵襲的な方法であり,日常診療で施行するには難しい。
また,緑内障手術には低侵襲で合併症が少なく安全性の高い MIGS(minimally invasive glaucoma surgery)が広く普及しているが,MIGSは一部の症例では十分な眼圧下降効果が得られないことがあり,その原因の一つとして房水流出抵抗が考えられている。
OCTAは,移動する赤血球によるOCT信号の位相変化を検出することで生理的条件下に短時間で血流を画像化できる,患者の負担が少ない非侵襲的な検査法。研究グループは,前眼部OCTAによって得られる深層画像が房水流出路が描出できることを報告している。
そこで研究グループは,術前の前眼部OCTA画像が,MIGSの手術効果に関連するかどうかを検討した。
MIGS施行予定の37例37眼を対象に,術前前眼部OCTA血流画像の血管密度と術後成績との関係を計画的に調べたところ,術前の深層血管密度が低いほど手術成功となる可能性が高いことが確認された。また,術前眼圧が低いほど,深層画像の血管密度のうち,特に外側の領域の血管密度が低いほど,高い眼圧下降が得られることを確認した。
この結果から,術前にMIGSが奏功することが予測できれば,従来であれば,手術侵襲が大きく術後合併症も多いものの,眼圧下降効果に優れる濾過手術を選択していたであろう患者に,MIGSを選択することも可能となる。また,MIGSの効果が期待できないと予測できれば,濾過手術を選択することで再手術を回避できる可能性もある。
研究グループは,今後,前眼部OCTA撮影機器の改良や多数例でのさらなる検討が必要であるものの,個々の緑内障症例の病態理解を深めると同時に治療法を選択するうえで有用な検査として,今回の成果の発展が期待されるとしている。