先端素材高速開発技術研究組合(ADMAT),日本ゼオン,産業技術総合研究所は,人工知能(AI)によって材料の構造画像を生成し、高速・高精度で物性の予測を可能とする技術を開発した(ニュースリリース)。
材料開発のさらなる高度化・高速化の要求に応えるため,急速に発展したデータ駆動型の研究開発によって,ディープラーニング(深層学習)などの情報処理技術を利活用する動きが活発になっている。
これらは,さまざまな材料データをコンピューターに学習させることで,高性能な新しい材料の提案を可能とするAI技術で,人の勘や経験に頼る従来の材料開発をさらに高度化することができる。しかし,コンピューター上で扱える材料は構造が定義できる低分子化合物や周期構造を持つ金属,無機化合物に限定されることが大きな課題だった。
このような背景のもと,新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は機能性材料開発の高速化を目指し,データ駆動を活用した研究を進めている。この事業で研究グループは,より汎用性の高い材料へディープラーニングを適用する手法を開発した。
今回開発した技術では,まず複雑な構造を持つCNT膜の構造画像と物性をAIに学習させる。その上で,種類の異なるCNTを任意の配合で混合した場合のさまざまなCNT膜の構造画像をコンピューター上で生成することで,実際の実験と比べて98.8%もの時間を短縮し,その物性の高精度な予測を可能にした。
この技術は,従来のAIでは適用できなかった複雑な構造を持つ材料の組成選定・加工・評価といった一連の実験作業をコンピューター上で高速・高精度に再現(仮想実験)することを可能にするもので,材料開発のさらなる加速が期待できるという。
研究グループは今後,CNTをはじめとするナノ材料と高分子材料との複合材料を対象とした汎用的なAI技術開発に取り組むとともに,ファインセラミックス,マルチマテリアルといった幅広い材料へ適用可能な技術開発につなげていくとしている。