東北大,常温で量子情報の3D画像の観察に成功

東北大学の研究グループは,常温でマイクロメートルの微小試料に対し,ナノメートルの分解能で電子スピン(ラジカル)のイメージングを可能にする超小型3D MRI技術を開発した(ニュースリリース)。

細胞内部の生命活動を非破壊で解明する観察技術は,今後生命科学分野において応用が期待されている。

今回,小型コイルや小型磁力センサー,スキャニングステージなど,量子効果を磁力として検出し画像化する磁気共鳴力顕微鏡(MRFM)計測システムの主要精密機械構成要素の大部分を独自開発し,それらを精度良く組み立て,観察技術を実用化レベルにすることに成功した。

これまで,MRFMの実用化に向けてはそ長い観測時間が課題となっていた。そこで,きわめて高感度なSiナノワイヤー型磁力センサーを使用することと,画像処理に必要な応答関数を正確に定義することを試みた。

Siナノワイヤー型磁力センサーは,aN(アトニュートン)の力感度を有するセンサー。高感度に力を検出するために,200nmの厚さの単結晶Siをパターニングし,幅160nm,長さ32μmのナノワイヤーに加工したもの。ナノワイヤー中央部に変位計測に用いる干渉計のためのミラー部があり,先端には微細加工技術を駆使して設計・試作した球形状永久磁性粒子を設置している。

その結果,観測データ数が少なくても広範囲の電子スピン密度分布を高精度に画像化することを可能にした。さらに,応答関数にノイズパラメータを使用した波数空間での単純な畳み込みを使用するフーリエ変換を用いることによって,3D画像化処理にかかる時間の短縮に成功した。

電子スピンを含む2×5×8µm3の微小試料を用いて実測したところ,電子スピンの濃度分布を3D画像に変換した後のサンプルの形状は光学画像の形状と一致しており,内部密度構造の精度が示された。

今回,磁気共鳴検出に使用しているSiナノワイヤーと球状磁性粒子の組み合わせは,今後,生きた細胞のMRI画像の取得や種々のサンプル内部観察といった量子生命科学に向けた高速MRFM計測システム構成要素の優れた組み合わせ候補であるとしている。

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