早稲田大学,東北大学,愛知工業大学は,周囲の圧力に応じて発光強度が変化する感圧塗料(Pressure-SensitivePaint; PSP)による機器表面の圧力分布計測(PSP計測法)の後処理法として,圧力分布の再構成にスパースモデリングを用いたノイズ除去法を開発した(ニュースリリース)。
機器表面での圧力分布を計測可能な手法としてPSP計測法が注目されている。PSP計測法は,その発光強度の変化から圧力分布を計測でき,従来の半導体圧力センサーなどの点計測法に対して高い優位性がある。
一方で,PSP計測法における大気圧近傍での微小な圧力の変化の計測には,微小な発光強度変化を検出する必要があり,カメラのショットノイズなどに信号が埋もれてしまう。これまでに様々な方法が提案されてきたが,汎用性の高い手法はなかった。
研究では,PSP計測の後処理法としてスパースモデリングを用いたノイズ除去法を開発した。手順として,まずはノイズを多く含む原画像を,固有直交分解(Proper Orthogonal Decomposition; POD)によるモード分解を行なった。得られたモード分解データから,流体現象を効率的に表現できる空間位置,すなわち最適センサー位置を特定する。
この空間位置において,得られている時系列データをフィルタリングし,フィルタリングされた時系列データを説明できるように各モードの係数を決定する。このときなるべく簡単なモデルで表現できるように,スパースモデリングを用いる。
研究では,小型低乱風洞において提案手法の妥当性を評価する実証実験を実施した。角柱後方に生じるカルマン渦列によって生じる圧力分布を,PSPによって計測を行なった。その結果,今回新たに提案した手法によって,PSP計測データのみから,ノイズの影響を大幅に低減した計測データの再構成を行なうことに成功した。
また,この手法により再構成された圧力データは,半導体圧力センサーを設置した箇所で,従来データとの計測値のずれが2%以内と,精度も十分に高いことが実証されたという。
従来は,PODモードのうち,エネルギーの大きい上位の6,7のモードから,流れ場の構造を議論されることが多くあった。今回の成果により,研究のスパースモデリングの観点に基づくと,細かい流れ構造を表現するためには,より下位のモードも必要であることを明らかにした。
研究グループはこの成果により,広範な機器の流動の実験解析にPSP計測法の適用が可能になると期待されるとしている。