東京大学大学の研究グループは,画像解析技術を使って,デジタルカメラで撮影された画像から鉢植え植物の3次元データを高精度で自動測定するPythonパッケージ(EasyDCP:Easy Dense Cloud Phenotyping)を開発・公開した(ニュースリリース)。
植物の形を計測することは,植物学の最も基本的な作業だが,草丈・投影葉の面積・草姿など植物の形に関する表現型の測定は労力がかかる。そのため,植物の2次元・3次元形質を大量に高速で測定する技術開発が盛んに行なわれている。
しかしながら,これまでの技術は計測のための大規模な専用施設や,レーザースキャナーのような特別で高価な装置を必要とした。そのため野外や温室で栽培した鉢植え植物を安価に高速に測定するシステムの開発が望まれていた。
研究グループは,通常のデジタルカメラと,市販およびオープンソースのソフトウェアを組み合わせて,鉢植え植物の撮影画像から3次元形質を自動で測定するパイプライン(EasyDCP)を開発した。このパイプラインは,①デジタルカメラを用いた植物株の撮影,②撮影された2次元画像から3次元点群構築を行なう,③3次元点群データを分析し,植物の形質に関わる特徴量の計算,の3ステップからなる。
EasyDCPの精度を評価するために,5種類の植物の草丈と投影葉面積を,手作業での測定値と商用のレーザースキャナーによる測定値とで比較した。その結果,EasyDCPは非常に高い精度で形態形質を推定できることがわかった。具体的には,投影葉面積はレーザースキャナーと同程度(Easy DCP:決定係数0.96,レーザースキャナー:決定係数0.96),草丈に関してはこの手法の方が正確だった(Easy DCP:決定係数0.96,レーザースキャナー:決定係数0.86)。
この手法は,撮影から測定までが半自動化されている。また,特別な撮影装置を必要とせずカメラで撮影するだけなので,多様なサイズの植物を計測できる。加えて,必要なコストは10万円程度(デジタルカメラと有料の3次元点群構築ソフトウェア)と非常に安価だという。そのため,生態学的な研究をはじめ,これまで3次元形質測定が用いられてこなかった様々な植物科学分野への応用が期待されるとしている。
なお,EasyDCPのソースコードとテスト用データはhttps://zenodo.org/record/4756537#.YJ3zzLeRVt0で公開しており,誰でも利用できる。