産業技術総合研究所(産総研)は,開発したシリコンフォトニクス光スイッチ(以下 光スイッチ)におけるポート間クロストーク(以下 クロストーク)の影響を詳細に解析し,131,072ポートの光スイッチネットワークにおいて世界最大の光スイッチ総容量1.25億Gb/sを達成できることを示した(ニュースリリース)。
電気スイッチの負荷を軽減するとして期待されている小型・高速な光スイッチは,10万ポート程度という大規模化が必要となる次世代データセンターやスーパーコンピューターへの応用に向けて注目が集まっており,産総研は,Clos構成により512ポート,150万Gb/s相当までの拡張性を確認していた。
しかし,大規模化に伴いクロストークの影響が大きくなるため,光スイッチによるClos構成において,どの程度のポート数やエネルギー効率が達成され得るかは未解明であった。
今回,世界最大規模のシリコンフォトニクス32×32ポート光スイッチを用い,性能の制限要因となるポート間クロストークの影響を詳細に解析し,131,072ポートの光スイッチネットワークにおいて総容量1.25億Gb/sを達成できることを示した。
光スイッチの性能を実験的に検証し,その結果からクロストークの影響を定量的に考察した。検証実験においては,標準的な誤り訂正符号を想定した光信号を用意した。この信号を32×32ポートの光スイッチネットワークを6~9周伝送させ,6~9段の光スイッチを模擬した。
9段伝送後のクロストークの総数は膨大であるにも関わらず,波形に大きな歪みは見られなかった。また,誤り訂正技術適用前のビット誤り率で,9段伝送後でも誤り訂正限界を下回る結果を得た。これらの結果は,誤り訂正技術によりクロストークの影響を抑制すれば,高信頼な信号伝送が可能となることを示すもの。
32×32ポート光スイッチのポートを全て占有した場合のエネルギー効率は,1スイッチあたり0.06pJ/bitであり,最先端の電気スイッチを用いたClos構成より100倍以上も高いことを確認した。
研究グループはさらに,光スイッチの規模にかかわらず常に高い精度でクロストークを推定する方法を考案した。既存技術はクロストーク振幅を正規分布と仮定するが,今回はクロストーク振幅を厳密に算出できる特性関数法による解法を提案し,光スイッチに与える影響を精度よく分析できた。
研究グループは今後,この成果を積極的に情報発信し,実用化・量産化に向けた技術開発を継続する。また,シリコンフォトニクス光スイッチのさらなるポート数や総容量の拡大を目指すとしている。