名大,真空蒸着可能なフラーレン誘導体を開発

名古屋大学は,温和な酸化剤を用いたメトキシ基からケト基への直接酸化反応を開発し,その反応を鍵として,400°C以上の高温にも安定で,真空蒸着による成膜が可能な「フラーレン誘導体」を開発した(ニュースリリース)。

炭素原子60個からなるフラーレン(C60)は,n型の代表的な有機半導体。フラーレンに有機化合物を取り付けたフラーレン誘導体は,フラーレンを高機能化する目的で,様々なものが合成されている。

フラーレン誘導体は,フラーレンよりも有機溶剤に良く溶け,溶液塗布法での利用が可能だが,真空中で加熱すると分解し,元のフラーレンなどに戻ってしまうため,産業界で主流の真空蒸着法に用いることができないという大きな欠点があった。

今回研究グループは,,真空蒸着に耐えうる熱安定性をもったフラーレン誘導体「フラーレンケトン」を開発した。このフラーレン誘導体は,400°C以上の熱安定性を持つ。今回,フラーレンケトンを真空蒸着機に入れて加熱し,蒸着して作製した薄膜を分析したところ,フラーレンケトンが分解せずに,成膜されていることがわかった。

さらに,真空蒸着が可能な「フラーレン誘導体」として必要な条件は,①フラーレン上に炭素原子でできた5員環があること,③その5員環に炭素−水素結合を持たないこと,であることをつきとめた。

作製したフラーレンケトンの真空蒸着膜は,フラーレンの真空蒸着膜と同程度の電子移動度をもつことがわかった。また,フラーレンケトンの真空蒸着膜を電子輸送層として用いて,安定なペロブスカイト太陽電池を作製することにも成功したという。

今回,フラーレンケトンの高効率な合成に成功した背景には,メトキシ基からケト基へ,直接酸化する新しい反応を開発したことがある。メトキシ基をケト基に一段階で酸化するこの新しい酸化反応は,空気中で反応を実施できて,収率は90%以上であり,フラーレンケトンの工業的な大量合成を可能にするものだとする。

今回発見した真空蒸着が可能な「フラーレン誘導体」は,熱に安定な新しいn型有機半導体として,有機太陽電池や有機イメージセンサーに用いられることが期待される。ペロブスカイト太陽電池においても,その課題であった安定性の向上に役立つと考えられるという。その他,有機EL素子や有機トランジスタなど,様々な有機電子素子において用いられると考えられるとしている。

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