神大,ナノアンテナで磁気双極子遷移発光を増強

神戸大学の研究グループは,高い屈折率をもつ誘電体のナノアンテナを用いて,“磁気双極子遷移” による発光を大幅に増大する技術の開発に成功した(ニュースリリース)。

ナノアンテナは可視から近赤外領域に光学的な共鳴をもつ金属や誘電体のナノ構造であり,分子などの光吸収や光放出(発光)を増強する。従来の金属材料からなるナノアンテナは光の電場成分に強く応答し,主に“電気双極子遷移”に対して増強効果を示す。

しかしながら,もう1つの遷移過程である“磁気双極子遷移”については,微弱であるためこれまでほとんど考慮されていなかった。

誘電体のナノ粒子に電磁波(光)を照射すると,Mie共鳴を示す。Mie共鳴には電気的共鳴と磁気的共鳴があり,この研究では磁気的共鳴を利用すると,物質の“磁気双極子遷移”を大幅に増強できることを実証した。

具体的には,最低次の磁気的Mie共鳴である磁気双極子共鳴と高次の磁気四重極子共鳴と物質の磁気双極子遷移が結合すると,ナノ粒子がアンテナとして機能し,磁気双極子遷移の増強が期待されるという。

ナノアンテナとして球状の結晶シリコン球を仮定し,近傍に置かれた磁気双極子の遷移レートを計算した。磁気双極子としては,波長590nmに磁気双極子遷移発光を示すユーロピウム(Eu3+)錯体を仮定した。計算の結果,直径208nmのシリコン球の磁気四重極子共鳴と結合した場合に,波長590nmの磁気双極子遷移が最も増強されることを見いだした。

実験的に高い増強度を得るためには,ナノアンテナの形状,サイズ,配置を設計通りに制御する技術が不可欠となる。今回は,独自に開発したほぼ完全に球形で,結晶性の高い球状シリコンナノアンテナを用いて,磁気双極子遷移増強の実証を行なった。

このシリコンナノアンテナの表面にユーロピウム錯体を付加し,顕微分光法により作製した粒子の発光スペクトルを測定したところ,直径208nmの粒子において,磁気双極子発光が電気双極子発光(610nm)に対して1桁以上増強することを観測した。

また,Mie散乱特性の評価と理論計算により,発光増強がナノアンテナの磁気四重極子共鳴との結合によるものであることを実証した。

今回開発したナノアンテナはサイズにより共鳴波長が制御可能であるため,あらゆる分子に適用できる。また,この技術により,これまで見過ごされてきた電子遷移,例えば一重項-三重項間の遷移を大幅に促進することができるという。

研究グループは今後,ナノアンテナを反応デバイスに組み入れることで,新しい光化学反応プロセスへの展開が期待されるとしている。

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