阪大ら,小型テラヘルツ合分波器を開発

大阪大学と豪アデレード大学は,シリコンを用いた小型テラヘルツ合分波器の開発に成功した(ニュースリリース)。

6Gに関して5Gを超えた超高速無線通信の実現を目指し,テラヘルツ波に関する研究が進展している。

そこではカギとなる波長多重通信技術が超大容量通信実現には異なる周波数の信号を合成・分離する合分波器が必要だが,光通信で広く利用されている合分波器の大きさは,一片の大きさにして波長の2000倍以上あり,光と比べて波長の長いテラヘルツ波では,例えば300GHz帯では,約2mもの大きさになってしまう。

また,通常の電子回路で利用される金属配線で合分波器を構成しようとすると,テラヘルツ帯では信号が吸収されて小さくなってしまうため,テラヘルツ帯では小型で実用的な合分波器は実現されていなかった。

研究グループは,誘電体としてのシリコンに着目。抵抗率の高いシリコンはテラヘルツ波の吸収が極めて小さく微細加工もできる。また,屈折率が高く,テラヘルツ波を強く閉じ込めることが可能なため,デバイスサイズの微小化も可能となる。

シリコン配線中を伝搬するテラヘルツ波には,シリコンからの染み出し成分が存在するが,このシリコン配線に別のシリコン構造を近づけると,テラヘルツ波が空隙をまたいで乗り移る(テラヘルツ波のトンネリング現象)。

ここで,テラヘルツ波の波長が短くなると(周波数が高くなると)染み出し成分が減るため,テラヘルツ波が乗り移らない状況になるが,空隙を狭くすると乗り移る。このような周波数依存性と空隙の大きさの関係を利用した設計を巧みに行なうことで,周波数によってシリコン配線中を伝搬するテラヘルツ波の経路を分けることができるという。

このような設計指針に従い,300GHz帯で動作する4チャネルの合分波器の開発に成功した。その一片の大きさは波長のわずか25倍であり,通常の光通信用の合分波器と比較して,面積比で約1/6000に小型化した。

この合分波器にテラヘルツ送信器と受信器を接続し,通信実験を行なったところ,各チャネルにおいて,オンオフ変調方式で12Gb/s秒以上,すなわち,合計48Gb/s以上の通信に成功したという。

今後,共鳴トンネルダイオードなどの送受信デバイスを集積化した小型テラヘルツトランシーバーの開発を進めるとともに,動作周波数の向上、チャネル数の増加および,多値変調方式の利用などを進めることで,6Gのさらに次世代の目標になると予想される1Tb/s級の超大容量通信の実現にもつながる。また,このデバイスと同様の設計を行なうことで,光通信用合分波器の小型化も可能だとしている。

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