京大ら,絶縁体と金属の両方に量子振動を観測

京都大学,茨城大学,米ロスアラモス国立研究所,米ミシガン大学は,イッテルビウム化合物YbB12の電気抵抗が磁場とともに振動する量子振動を絶縁体と金属の両方の状態において観測し,電荷中性の粒子がこの量子振動を引き起こしていることを明らかにした(ニュースリリース)。

温度の低下とともに,金属は電気抵抗が減少し,絶対零度でも電子が流れることができる一方,絶縁体では電気抵抗が増大し,絶対零度において電気抵抗は無限大となり電子は流れない。

金属にはフェルミ面を持つという特徴がある。フェルミ面とは電子の示すフェルミ統計に従って,運動量ベクトル空間のエネルギーの低い状態から全部の電子を詰めた時,電子で占められた状態と占められない状態の境をなす曲面のこと。金属はフェルミ面によって様々な性質が決まる。

フェルミ面の存在を示す最も直接的なものは,強磁場中で電気抵抗や磁化が示す量子振動と呼ばれる現象であり,量子振動は金属状態で観測され,その起源は電荷を持つ粒子(通常,電子)によるものであるというのがこれまでの物理学の常識だった。

最近,研究グループは,絶縁体であるYbB12において,本来観測されるはずのない量子振動が観測されること,さらには物質中に金属中の電子のように熱を伝える謎の電荷中性粒子が存在することを報告している。このことは,YbB12が絶縁体とも金属とも区別することができない電子状態を持つことを示している。

YbB12においては,非常に強い磁場により絶縁体状態が壊され金属状態が現れることが知られているが,この磁場により誘起された金属状態の性質を明らかにすることは,量子振動や中性粒子の起源を明らかにする上で重要だと考えられる。そこで今回,超強磁場下でYbB12の研究を行なった。

研究グループは,近藤絶縁体と呼ばれる物質群のひとつであるYbB12において,精密電気抵抗測定を75テスラまでの強磁場中で行なった。その結果,絶縁体と金属の両方の状態において量子振動を観測した。

量子振動の振動周期や振幅の詳細な解析から,金属状態においても電荷を持つ粒子が量子振動を起こしているのではなく、絶縁体と金属の両方の状態において電荷中性の粒子が量子振動を引き起こしていることを明らかにした。さらに金属状態においては電荷中性粒子と電子が共存し,前例のない特異な金属状態が実現していることを示した。

今回の発見は,電荷中性の粒子がフェルミ面を持つという新しい状態を明らかにしたもの。今後は中性粒子の起源を明らかにすることで,物理学に新しい概念をもたらすことが期待されるとしている。

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