キヤノンは,同一X線イメージセンサー面の素子を用いて画像を生成すると同時に,照射されたX線に相当する画素値をリアルタイムに検知し,あらかじめ設定した基準値と比較,通知することが可能な新技術を開発した(ニュースリリース)。
X線を用いて撮影を行なう医療現場において,「人体へのX線の照射は社会的・経済的要因を考慮しながら,できるだけ少なくするよう努力すべき」という放射線防護の基本的な考え方である「ALARAの原則」に基づき,さまざまな取り組みが行なわれている。
例えば,X線撮影システムでの撮影に際しては,一般的にX線発生装置から被写体に対して過度にX線が照射されないよう管理するため,照射されたX線に相当する電流を検知する外付けデバイスが使用されている。しかし,DR(Digital Radiography)方式のX線撮影装置などをシステムの撮影台から取り外してワイヤレスで撮影を行なう場合など,外付けデバイスが使用できないケースがあった。
今回同社は,長年にわたり培ってきたX線センサー技術とイメージング技術を生かし,従来,外付けデバイスが担っていた機能を撮影装置に内蔵させることができる新技術「Built-in
AEC Assistance」を開発した。この技術では,X線イメージセンサー内の電気信号の高速読み出しや各種アルゴリズムによる画素値補正を可能にすることで,同一センサー面の素子を用いて,画像を生成すると同時に,照射されたX線に相当する画素値をリアルタイムに検知する。
さらに,基準値をあらかじめ設定しておくことで,画素値が基準値に到達した時点でX線発生装置へ通知することができるため,専用の外付けデバイスを使用することなく,X線発生装置側でX線照射の自動停止が可能になる。
同社は今後この技術をX線デジタル撮影装置の同社シリーズに搭載していくことで,病院内における回診撮影を含む幅広い撮影シーンに対応できるよう製品開発を進めていく。また,医療以外のさまざまな用途への応用も視野に入れた開発を進めていくといている。