理研ら,高強度X線による特殊な融解現象を可視化

理化学研究所(理研),筑波大学,高輝度光科学研究センター,独電子シンクロトロン,チェコ科学アカデミーは,X線自由電子レーザー(XFEL)施設「SACLA」を用いて,高強度X線を物質に照射した際に起こる融解過程をフェムト秒オーダーの高い時間分解能で可視化することに成功した(ニュースリリース)。

強力な光であるXFELを試料に照射すると,多数の電子が同時に励起され,試料に不可逆的な構造変化が生じるが,この構造変化は非常に速く生じるために,その詳細なメカニズムや構造変化のスピードは明らかになっていなかった。

研究グループは,SACLAから時間差を制御した二つのXFELビームを出射し,試料に最初に当たるXFELビームを構造変化を引き起こすポンプ光として,次に当たるXFELビームをプローブ光として用いた。そして,ポンプ光とプローブ光の時間間隔を1fs以下の精度で変化させながら,プローブ光による試料からの回折強度を測定し,ダイヤモンドの電荷密度分布が時間とともに変化していく様子を可視化することに成功した。

その結果,ポンプ光を照射してからわずか5fsの間に原子間の化学結合が切れて,原子の周りの電荷密度がほぼ球対称になることが明らかになった。この等方的な電荷密度は,それぞれの原子が周りの原子の影響を感じておらず,あたかも孤立した原子になっていることを意味するという。

さらに,化学結合が切断された後さらに15fs以上遅れて原子が移動し始めることが分かった。物質を光や熱などで温めることで起こる通常の融解過程では,原子の熱による移動(熱振動)がだんだんと大きくなっていき,ある時点で化学結合が耐えられなくなることで,固体から液体への相転移が起こる。一方で,今回観測された融解過程では,化学結合の切断と原子の移動の時間的な前後関係が通常の融解過程とは反対になっている。

これらの実験結果と詳細なシミュレーションの結果,XFELの照射は電子の励起による原子間ポテンシャルの平坦化をもたらし,それによって原子がもともと持っていた速度で位置を変化させていく,という融解のメカニズムが明らかになった。この過程は,原子の熱振動が原因で起こる融解ではないため,「非熱的な融解」ということができるという。

この非熱的な融解過程は,さまざまな物質においても同様に起こると予測できる。高強度のXFELをうまく使いこなすことは,タンパク質微結晶の構造解析やX線非線形光学現象の探索など,21世紀のX線科学にとって極めて重要となるとしている。

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