情報通信研究機構(NICT)は,資生堂と共同で,肌の光沢に由来する魅力度を反映するヒトの脳活動を世界で初めて特定した(ニュースリリース)。
光沢などの質感に由来する感性価値(例:魅力,心地よさ,高級感,ときめき,感動など)の高い映像や製品の開発は,多くの企業にとって重要な課題であると同時に人々の精神的な豊かさの向上に大きく寄与すると考えられる。
しかし,これまでの感性価値の評価は,主観的な印象報告に基づいていたため,その信頼性に課題があった。脳活動計測に基づいた評価技術の開発により,この課題を克服することを目指し,NICTでは,これまでに光沢知覚に関わる脳部位を世界で初めて特定したが,光沢などの質感に由来する感性価値を反映する脳活動の特定には至っていなかった。
今回NICTは,資生堂と共同で,質感のわずかな差異が大きな印象変化をもたらす人の肌において,fMRIを用いて,肌の光沢に由来する魅力度を反映するヒトの脳活動を世界で初めて捉えることに成功した。
この実験では、肌の光沢の質的な違い(“マット”,“テカリ”,“つや”)に着目し,それに特化した,
①MRI装置内での正確な質感再現手法
②fMRI撮像手法
③実験デザイン
の3つの工夫を組み合わせることにより,肌の光沢の違いによる魅力を処理する脳部位(眼窩前頭皮質内側部;眉間の数cm後方)を特定し,さらにその脳部位の脳活動の大きさが肌の光沢の違いによる魅力度を反映していることを明らかにすることができた。
今後は,感性価値の高い映像・製品・環境の開発やデザインなどに生かしてくために,質感に由来する感性価値の評価手法の開発をさらに進め,脳活動計測に基づく客観的・定量的な評価技術の確立を目指すとしている。