電気通信大学は,5G高度化・次世代の6Gに向けた多数同時接続・低遅延を実現する新たな通信技術について,特許出願を行なった(ニュースリリース)。
2020年から日本でも5Gのサービスが開始され,今後,自動運転やドローンによる荷物配送,リアルタイムヘルスケアといった低遅延性を要求するIoT製品が急増することが見込まれている。一方,データ需要の大幅な増加により,ネットワークへの負担がますます増大し,5Gシステムでは,これらのIoT製品の通信要求に対応できなくなることが予想されている。
既存システムでは,データ送信の際には,通信の許可である「グラント」を基地局から取得する必要があり,これが10ミリ秒程度の遅延を発生させていた。一方,今回の提案では,この手続きを省略し,端末がグラントなしで自由にデータを送信することができる。
その際,各端末を特定するリファレンス信号を時間・周波数軸上に配置し,データ信号を周波数軸で繰り返し符号化した上で送信することで,基地局において,圧縮センシングに基づいた効率的な情報復元を可能にする。これにより,1ミリ秒以下という短時間で多数ユーザによるデータ送信を可能にした。
これにより,1ミリ秒の伝送時間,1ユーザあたり125バイトのデータ伝送,5G New Radioの物理層を想定した場合,理論上最大で30万台のユーザ端末(うち10%に当たる3万台の端末が毎回ランダムに送信)が収容できることがわかった。また,シミュレーションで伝送特性を評価し,良好な特性が得られることを確認したという。
これまでにない低遅延(1msec以下)・多接続(最大3万台の同時送信)で,100バイト程度の情報が伝送できることから,今まで実現できなかった様々なアプリケーションが実現可能となる。研究グループでは,例えば膨大な数のセンサからのリアルタイム情報取得,医療分野でのリアルタイム遠隔治療・診察等への活用,自動車やバイクなどの自動運転,ロボットの遠隔操作、配送ドローンの制御等の応用が考えられるとしている。