兵県大ら,高分子材料の高次構造を新手法で表現

兵庫県立大学とジェイテクトは,京コンピューターを駆使した大規模分子シミュレーションにより,高分子材料の高次構造を応用数学の手法であるパーシステントホモロジーによって特徴付けられることを示した(ニュースリリース)。

ソフトマターと呼ばれる物質群は,高分子,液晶,コロイド,ガラスなどがその代表であり,我々の体を構成する物質(タンパク質や核酸,糖など)の大半はソフトマターに含まれる。これらの物質は高度な秩序を自発的に形成するため,単体の水や油などの単純液体と比較すると,生命現象をはじめとする高機能を発現する。

材料の特性を理解する第一歩は,原子と原子の配置を特徴づけることだが,これまで,単純液体に関しては動径分布関数という有効な指標があった。動径分布関数は,ある原子の周囲の原子分布を表す関数(液体の場合は曲線)であり,分光学実験で得られるスペクトルと関係づけられ,また,分配関数などの統計力学的な物理量と精密に関係づけられる。

一方,ソフトマターの多くは高次構造と呼ばれる,ある原子の近傍の様子だけでは捉えられない構造を有する場合が多い。最も単純な高分子であるポリエチレン(ビニール袋の素材)であっても,原子より大きなスケールにおいて局所的に結晶やアモルファスといった高次構造が折り重なっていることが知られている。

ソフトマターの高次構造を捉える応用数学的な手法として,パーシステントホモロジーという手法が近年提案された。これは,原子の配置に対して仮想的に半径を広げていった際に生成・消滅(birthdeath)する空隙の姿を2次元のマップ上に表現する手法で,この手法により,ガラス
と液体の違いが表現できることや,材料のひび割れを表現できることなどが知られてきた。

研究ではより基礎的に,高分子溶融体において動径分布関数では表現しきれない構造をパーシステントホモロジーで捉えることができるかどうかを,京コンピュータを用いた大規模分子動力学シミュレーションで調べた。その結果,パーシステントホモロジーによる解析によって,高分子材料においてはじめて高次構造の特徴と基礎的な物性が関連づけられることが示された。

研究グループは今回の成果について,この手法を分子論的に正しく基礎づける必要があるとする一方,より複雑な系,たとえば水のような溶媒の効果を含む高分子材料系や添加剤を含む潤滑油などへの適用が期待されるとしている。

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