阪大ら,生体を高精細マルチモーダルイメージング

大阪大学,静岡大学,伊Molecular Horizon Srlは,高空間分解能で試料の化学成分と形状を同時に可視化するイメージング技術を開発した(ニュースリリース)。

試料に含まれる多様な成分を抽出・イオン化し,質量分析を行なう質量分析イメージングは,試料内の複数の化学成分の分布を一度の計測で捉えることができる。

高空間分解能のイメージングを行なうためには,試料の微小な凹凸形状や,試料を保持するための基板の傾きによる,抽出・イオン化への影響を抑制する技術が求められていた。

研究グループはこれまでに,タッピングモード走査型プローブエレクトロスプレーイオン化法(t-SPESI)を開発してきた。tSPESIは,高速に振動するキャピラリプローブを介して,高電圧が印加されたピコリットルの溶媒を試料に断続的に供給することで,試料の局所領域に含まれる化学成分を高速に抽出・イオン化する。

イオン化にはエレクトロスプレーイオン化法(ESI)を使用し,生体分子の構造を壊さずに気相イオンに変換する。キャピラリプローブを試料表面に対して二次元方向に走査することで,試料の座標情報に紐付いたマススペクトルを取得し,特定の化学成分の試料内分布を可視化する。

研究では,試料の凹凸形状をナノスケールで計測することが可能な原子間力顕微鏡の要素技術を,tSPESIの計測システムに融合することで,試料の形状情報をリアルタイムに計測しながら抽出とイオン化を行なう技術を実現した。

キャピラリプローブの側面にレーザー光を照射することで生じる影の変位から,プローブの振動振幅を計測する技術と,振動振幅の大きさが一定に維持されるように試料ステージとキャピラリプローブの距離を調整するフィードバック制御技術を開発し,t-SPESIの計測システムに融合した。

これらの技術を用いることで,質量分析イメージング,表面形状イメージング,振動振幅変化イメージング,位相変化イメージングを同時に実施する事に成功した。

既知の標準試料のイメージングでは,試料濃度に対するイオン強度の線形変化を確認し,マウス脳組織切片のイメージングでは,組織中の複数の脂質成分のイメージングが出来ることを示した。高空間分解能イメージングの結果から,空間分解能は6.5μmであることを確認したという。

この技術は,生体組織を精細に捉えるマルチモーダルイメージングのための基盤技術として重要。疾患組織を対象とした多次元化学分布情報計測と特徴量の抽出法の研究を進めることにより,疾病状態の理解が進展し,病気の診断技術への応用が期待されるとしている。

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