QST,X線磁気円偏光発光を理論的に解明

量子科学技術研究開発機構(QST)は,磁石を構成する無限個の原子の周期性とその中を動き回る電子の金属的な性質を取り扱った新たな理論を構築し,実験で発見された「X線磁気円偏光発光」のメカニズムを理論的に明らかにすることに成功した(ニュースリリース)。

「X線磁気円偏光発光」は,2017年に研究グループが新たに発見した磁気光学効果であり,磁石にX線を当てた際に内部で発生する蛍光X線が左回り円偏光と右回り円偏光の二つの成分を持ち,それぞれの成分の大きさの比(偏光度)が磁石の向きや強さにより変化する現象。

この蛍光X線の偏光度を正確に測ることができれば,磁石の中にある原子や電子の状態を知ることができ,磁石の特性の理解につながると期待される。

しかし,これまで使われてきた,原子1個のみを考える簡易的なX線発光の理論モデルでは,現実的な磁性金属内の電子状態・磁性状態を考慮できないことに加え,そもそもX線発光に及ぼす金属磁性の詳細な影響についての理論はいまだ構築されていなかった。

今回研究グループは,結晶状に周期配列した無限個の原子の中で磁気特性を有して動き回る金属電子の状態を考慮した新たなX線発光理論を構築した。この理論を基に数値計算した結果,X線磁気円偏光発光の実験結果の特徴を精度よく再現することに初めて成功し,その特徴が電子の金属性に由来することを証明した。

今回新たに構築した理論は,X線発光分光の金属性物質への応用を促進させ,その適用範囲を拡大させるものであり,X線磁気発光分光学という新たな学術領域を切り拓く,学術的に重要な成果だという。そして,X線磁気発光分光学の進展やそこで得られた成果は,高性能な磁石や磁性材料の開発へとつながっていくことが期待されるとしている。

キーワード:

関連記事

  • 夏目光学、東大との産学連携による高精度X線ミラー開発が「ものづくり日本大賞」優秀賞を受賞

    夏目光学(長野県飯田市)は、「ナノサイズの微小世界から何億光年と遥か宇宙の彼方を探る高精度X線ミラーの開発」により、第10回「ものづくり日本大賞」優秀賞を受賞した(ニュースリリース)。本開発は、東京大学先端科学技術研究セ…

    2026.04.03
  • 阪大など、メタサーフェスの直接結合で超小型・高効率な円偏光LEDを実現へ

    大阪大学とアルバックは、窒化インジウムガリウム(InGaN)発光ダイオード(LED)に周期的なナノ構造「メタサーフェス」を直接結合することで、高効率かつ超小型の円偏光デバイスが実現可能であることを明らかにした(ニュースリ…

    2026.03.26
  • 岡山大など、「分子の右と左」を見分ける光を超高速で切り替え

    岡山大学の研究グループは、中国・東南大学および中国・北京大学との国際共同研究により、アミノ酸の「右手型・左手型」のような分子の左右の違いを見分ける光(キラル光)を、分子サイズの一点に作り出し、超高速にON/OFF・反転で…

    2026.03.16
  • 東大、光と電場で生じる電流のメカニズムを解明

    東京大学物性研究所の研究グループは、電場をかけた固体に円偏光を照射することで生じる電流を理論的に調べ、その振る舞いが電子波動関数の幾何学的構造によって決定されることを明らかにした(ニュースリリース)。 固体に光を照射する…

    2026.03.11
  • 早大など、世界最長クラスのキラル発光ヘリセン分子の系統的合成に成功

    早稲田大学と阿南工業高等専門学校は、容易に入手可能な原料から2工程で分子の長さが異なる一連のらせん状低分子有機化合物であるヘリセンを系統的に合成する手法を開発した(ニュースリリース)。 近年、キラルな光である円偏光(CP…

    2026.02.06

新着ニュース

人気記事

編集部おすすめ

  • オプトキャリア