ダイセルは,同社の銀ナノインク「Picosil」を用いた低温プロセス(摂氏120度)での超細線描画に,2種類の描画方法で成功した(ニューリリース)。
銀ナノインクは数十nmの銀粒子を含有する,配線/電極を形成する導電インク。粒子径の小ささから,線幅の細い配線形成の可能性がプリンテッドエレクトロニクスの分野で期待されている。
特に,銀ナノインクによる5μm以下の超細線描画は,高温プロセスを必要とするインクを使用する方法によってのみ可能とされてきたが,低温プロセスで使用できる「Picosil」によって,樹脂フィルム等への描画が可能となった。
実験では,SIJテクノロジの「Super Inkjet Printer」を装置として,「Picosil」による線幅1.5μmという超細線の描画に成功した。さらに,OA機器や産業用途で広く用いられるピエゾタイプヘッドのインクジェット装置を用いて,線幅30μm以下の描画にも成功した。ピエゾタイプヘッドのインクジェット装置による銀ナノインクの描画は,これまで線幅60μm程度が限界とされてきた。
タッチパネルや有機ELの電極で用いられる透明導電層では,現在の性能より抵抗を低くすることが求められている。今回の超細線描画により,線幅1.5μmという人間が認識できないレベルの配線を付与することができることから,透明性を保ったまま,透明導電層のより低抵抗化を可能とするという。
同社では他にも,透明ヒーターの熱線への活用など,この銀ナノインクのさらなる用途拡大につなげていくとしている。