早稲田大学の研究グループは,シアノバクテリアのUV耐性が24時間周期で調節されていることを発見した(ニューリリース)。
生物は昼と夜の移り変わりにより生じる環境変化に日々晒されながら生きている。このような24時間の周期的な環境変化に適応するために,生物は体内時計(概日時計)を備えている。
体内時計は,一日の長さ(24時間)を自分の体内で測ることで,一日のうちに起こるイベント(例えば夜がくるタイミングなど)を予測して行動することを可能にしる。体内時計はバクテリアからヒトまで様々な生物に備わっているが,その仕組みは生物ごとに大きく異なることが知られている。しかし,体内時計のいくつかの性質は広く生物種を越えて保存されている。
例えばUVへの耐性はいくつかの生物で日中に高く,夜間に低くなり,概日リズムを示す。つまり,生物はUV照射量が日中に豊富となり夜間に低下することを知っており,そのような変動を予測して適応していると言えるという。これらの知見が基になり,昼夜の移り変わりに伴い変動するUV照射への防御機構として,体内時計は獲得されたとする仮説が提唱されてきた。
しかし,体内時計を持つ最も単純な生物として知られるシアノバクテリアにおいてUV耐性リズムが見られるかについては,20年以上前から提起され,検出が試みられてきたが<見出すことができておらず,そのためUV耐性の概日リズムが原核生物にまで共通した性質であるのかどうかはわかっていなかった。
今回,研究グループはシアノバクテリアにUVを照射した後に細胞を暗所に移すという手法により,シアノバクテリアのUV耐性が24時間周期で調節されていることを発見するとともに,シアノバクテリアがUV耐性とグリコーゲン代謝活動を時刻に応じて巧みに使い分けていることも示した。
この発見は,生物種を越えた共通の適応戦略の存在を示しすもの。光合成を行なう真核微生物の示すUV耐性の概日リズムは20年近く前に発見されたが,これらの生物の体内時計の仕組み自体が明らかでない部分も多く,体内時計によるUV耐性制御の分子機構の詳細は不明なままだという。
今回研究グループが明らかにしたUV耐性リズムの制御機構は,今後他の生物種の研究を推進する足がかりとなる可能性があるとしている。