阪大,水と酸素からH2O2を生成する光触媒樹脂

大阪大学は,太陽光照射下,水とO2を原料として非常に高いH2O2生成活性を示す,レゾルシノール-ホルムアルデヒド(RF)光触媒樹脂を合成した(ニュースリリース)。

H2O2は漂白剤や消毒剤として重要な化学物質であるほか,燃料電池発電の燃料として利用できるため,近年は,再生可能エネルギーの貯蔵・輸送を担うエネルギーキャリアとして注目されている。

従来,H2O2は,H2とO2を多段階で反応させるエネルギー多消費型プロセスにより合成されている。一方,光触媒反応では,太陽光エネルギーにより水とO2から合成する(H2O+1/2O2→H2O2,ΔG°=+117kJ mol–1)人工光合成3型のH2O2製造が原理的には可能であり,注目を集めている。

しかし,通常の光触媒では,水の四電子酸化(2H2O→O2+4H++4e)と,O2の選択的な二電子還元(O2+2H++2e→H2O2)を進めることは難しく,新しい光触媒の開発が求められていた。

研究グループは,これまで,汎用の合成高分子であるレゾルシノール-ホルムアルデヒド(RF)樹脂に着目してきた。RF樹脂は,本来は絶縁体だが,高温水熱法で合成することにより半導体光触媒として働くことを2019年に初めて見出した。この光触媒樹脂は,太陽エネルギー変換効率70.5%以上という,これまでに報告された粉末光触媒による太陽エネルギー変換反応としては最大の効率でH2O2を生成するという。

今回,研究グループは,RF光触媒樹脂の活性向上を目指した。RF樹脂は一般に,レゾルシノールとホルムアルデヒドを中性~塩基性水溶液中で反応させて合成する。研究グループは,酸性水溶液(pH4以下)での高温水熱法により高活性なRF光触媒樹脂を合成できることを見出した。芳香環が強くπスタッキングした低バンドギャップおよび高導電性の光触媒樹脂が生成し,太陽エネルギー変換効率0.7%以上の非常に高い効率でH2O2を生成した。

硫酸,塩酸,硝酸,シュウ酸,酢酸などの汎用の無機酸・有機酸を使用可能であるほか,調製した光触媒樹脂は3~5μm程度の球状粒子であり,取り扱いも容易なため,研究グループは,様々な加工により社会実装が期待できるとともに,今回の光触媒設計を応用することで,さらに高活性なH2O2合成触媒も創製できるとしている。

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