東京大学らは,東京大学木曽観測所の105cmシュミット望遠鏡に搭載された広視野CMOSモザイクカメラ「トモエゴゼン」と京都大学のMUレーダーを用いて,合計で228件の流星をレーダーと可視光で同時観測することに成功した(ニュースリリース)。
太陽系では彗星や小惑星によって微小な粒子(惑星間空間ダスト)が絶えず生成されており,惑星間空間を満たしている。惑星間空間ダストの空間密度やサイズごとの量を調べることによって,太陽系小天体の活動や微小な粒子の進化を調べることができるという。
これまで,質量が10mg以下の小さなダストが引き起こす暗い流星(微光流星)は,大出力の大型レーダー設備をもちいたヘッド・エコー観測によって研究されてきた。流星ヘッド・エコー観測は,微弱な流星を効率よく見つけ出すことができるが,観測量であるレーダー反射断面積からダストの質量を求めることが難しいという問題があった。
この問題を解決する方法としてレーダーと可視光による同時観測があるが,これまでの観測では主に光学観測の感度不足のために,レーダー反射断面積と光度の関係を十分な精度で得ることができなかったという。
研究グループは2018年4月18日から21日にかけての4日間,長野県木曽郡にある望遠鏡を滋賀県甲賀市にあるMUレーダー上空100kmほどの領域に向けて2fpsでの動画観測を実施。同時刻にMUレーダーで実施した流星観測の結果と慎重に照らし合わせることで,合計228件の散在流星がヘッド・エコーおよび光学観測の両方で確実に捉えることができた。
また,2009年から2010年にかけて収集したMUレーダーと高感度CCDカメラによる同時観測103件をあわせて,レーダー反射断面積と可視等級の関係を調査。今回の同時観測によって,レーダー反射断面積と可視光の明るさを結びつけるための関係式を得ることができたとしている。
さらに,研究グループは今回得られた結果を2009年から2015年にかけて実施されてきたMUレーダーによる散在流星のアーカイブデータに適用。合計15万件の散在流星のデータを解析し,流星を引き起こしたダストの質量を見積もったところ,ヘッドエコー観測では0.01mgから1g程度のダストを捉えられていることが分かった。
今回の研究では散在流星の個数(惑星間空間ダストの質量密度)に着目して研究を行なわれたが,今後は群流星の性質や,流星の色や軌道に注目することによって,惑星間空間ダストの起源に迫る研究を進めることを計画しているという。