大阪大学と愛媛大学は,ナノ多結晶状態のダイヤモンドが高速変形する際の強度を高強度レーザーで明らかにした(ニュースリリース)。
材料を多結晶状態にすることによって,その強度が向上すること自体はよく知られている。しかしながら,結晶粒をナノメートルレベルまで微細化したナノ多結晶体が,高速変形下でどのように振る舞うのかは明らかになっていなかった。
小さな結晶を石垣のように隙間なく詰め込んだ多結晶材料は,同じサイズの単結晶材料よりも強くなると言われている。研究グループは,その効果が最大になると考えられる数10nmサイズの微結晶を焼結させた,“ナノ多結晶”状態のダイヤモンド(NPD)に超高圧力を加え,その強度を調べた。
具体的には,単結晶と同等の密度に合成したNPDを,高強度パルスレーザーを用いて数ナノ秒という非常に短い時間に高速変形させた。光のドップラー効果を利用した独自の高精度観測システムによって,その圧縮変形特性をリアルタイムで計測することに成功した。
実験は,国内最大パルス出力の激光XII号レーザーを用いて行なわれ,地球中心圧力の4倍を超える1,600万気圧まで,体積が元の半分以下にまで変形していく様子を観察した。
今回得られた実験データから,NPDが通常の単結晶ダイヤモンドに比べ2倍以上も高い強度を有することが明らかになった。また,これまで調べられてきた全ての材料の中で最高の強度を示すことがわかった。
この研究成果は,極限環境で用いる構造材料や高性能セラミックスなど,高い強度が要求される材料の研究開発に影響を与えると考えられるという。10nmサイズのダイヤモンド微結晶を高密度に合成したNPDは日本の独自技術の成果だが,ナノ結晶間の相互作用が強度に顕著に影響することが明らかになったことから,超高強度材料としてさらに期待が高まるとする。
またレーザー核融合研究では,多結晶ダイヤモンドでできた球状のカプセルに燃料を入れて実験が行なわれていることから,初めて得られたナノ多結晶ダイヤモンドの圧縮変形特性は必要不可欠の知見だとしている。