広島大学と旭川医科大学は,革新的量子情報処理技術の基盤要素技術を担う量子ランダムウォークのウォーキング・メカニズムを世界で初めて解明することに成功した。また,それを用いて量子ランダムウォークを自由自在に操る方法を発見した(ニュースリリース)。
ランダムウォークは,ランダム系の確率過程のモデルの一つで,例えば,コイントスを行ない表が出たら右に裏が出たら左に1歩移動させ,酔っ払いの歩行を模倣できる。量子力学が支配するミクロな世界では,酔っ払い(ウォーカー)は波のように振舞い,波の特徴である干渉効果により,これまでとは全く異なる様相を示すようになる。しかし,波となったウォーカーのウォーキング・メカニズムは不明だった。
研究グループは,量子ランダムウォークの制御可能性を追求するために,量子ランダムウォークの動きを決めているコインに着目し,その機能解明のためコインの表と裏が出る確率に時間依存性(時間依存コイン)を導入した。
その結果,全く異なる概念である「コインと波の速度の等価性」を明らかにした。これにより,コインが量子波の速度を制御するというウォーキング・メカニズムを解明することができた。さらに,量子ランダムウォークのもう一方の量子性である粒子性に着目し,量子ランダムウォーク粒子の力学特性から粒子の速度を求めることで,波動性から求めた結果と同様の結果を得ることができた。
そして,このメカニズムを用いれば,時間依存コインを適切に設計することで,どんな軌道を持った量子ランダムウォークでも実現可能であることを発見した。これにより,課題であった情報をランダムな系においても自由に操ることが可能であることがわかったという。
今回,コインと干渉の関係(ウォーキング・メカニズム)を世界で初めて明らかにした。さらに,コインを制御することによって,量子ランダムウォークがランダムな性質を保持しつつ自由自在に制御可能であることを明らかにした。これは<量子コンピューターや量子ニューラルネットワークなどの次世代の革新的量子情報処理技術の核心的基盤要素技術を提供するものだとしている。