九州大学と北海道大学は共同で,1000億分の1秒の時間分解能で発光過程を追跡することにより,希土類金属錯体を用いた高効率有機発光体の錯体内エネルギー移動機構の解明に成功した(ニュースリリース)。
発光性希土類金属錯体は,色純度の高い発光を示すことから有機ELパネルなどの発光材料としての応用が期待されている。実用的な発光材料開発のためには高効率な錯体内エネルギー移動の実現が重要となるが,詳細な機構が不明であることが開発のボトルネックとなっていた。
これは希土類金属錯体の性質が一般の金属錯体とは大きく異なるため,エネルギー移動を伴う発光過程が非常に複雑となっていることに原因があるという。
そこで今回,独自に高時間分解能発光分光装置を改良・開発し,高効率赤色発光を示す三価ユウロピウム(Eu3+)錯体において錯体内エネルギー移動に伴い逐次的に起こる発光過程を実時間観測した。その結果,異なる速さをもつ二種類のエネルギー移動機構が存在し,これが高効率発光の起源の一つであることを見出した。
研究グループは,今回明らかになったエネルギー移動機構を基にすることで,希土類金属錯体を用いた新たな高効率有機発光材料を戦略的に設計できるようになるとして,実際に希土類有機ELを達成したいとしている。