岐阜大ら,高周波電磁波を実環境で可視化

岐阜大学,シンクランド,アークレイは,実環境で動作している波源から放射される電界の振幅と位相の空間分布を可視化する計測技術を開発した(ニュースリリース)。

近年、5Gや自動運転のための車載ミリ波レーダなど,高周波電磁波の産業応用が進展してきているが,高周波になるほど,電磁波のビーム形状(電界の空間分布形状)がアプリケーションのパフォーマンスに大きな影響を与えるため,実際の空間分布形状を計測する「可視化技術」が次世代高周波産業の開拓の要となる。

電磁界シミュレータは,電磁波を可視化し,その挙動を推定する極めて有用なツールだが,高周波数になるとシミュレーション結果と実際の振る舞いとの乖離が大きくなるが,VNAなどを用いる既存の計測手法は,位相分布を計測するために測定対象に信号を入力する,あるいは参照信号を固定点において検出する必要があるため,入力端子を持たない車載レーダやアンテナモジュールから放射される電磁波の電界分布を,実環境で可視化することが困難だった。

開発した技術は,電気光学プローブによりプローブ位置での電界の振幅値と位相の空間微分値を計測し,プローブを測定したい空間全域にわたって掃引することで,振幅と位相の空間分布が可視化される。測定対象と計測装置は独立しており,計測のために測定対象を改造する必要がないため,測定したい対象が置かれた実環境においてあるがままの電磁波の振る舞いが可視化されるという。

近傍界の振幅と位相の空間分布が可視化されれば,このデータから放射パターンを計算により求めることが出来るので,従来のような放射パターンを計測するための大きな電波暗室は不要となりる。また,放射パターンの乱れの原因を,近傍界分布の乱れから類推可能にもなり,これはシステム設計や最適化に重要な情報となる。実験では,周波数変調された信号であっても位相の空間分布の可視化に成功した。

研究グループは応用例として,車両に搭載され実際に運用される状況でのミリ波レーダの近傍界分布計測と放射パターン推定や,波源に信号を入力できないデバイスの近傍界分布計測と放射パターン推定を挙げている。

今回は 5G(28GHz)の周波数に近く車載レーダに利用されている24GHzでの原理検証を行なった。すでに77GHz帯(車載ミリ波レーダ応用),300GHz帯(Beyond5G/6G応用)においても基本原理の実証が完了しており,研究グループでは,測定精度と確度の向上に取り組んでいるという。

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