東大ら,ミリ波・THz波による磁気記録方式を開発

東京大学,大阪大学,富士フイルム,筑波大学,日立ハイテクらは,ミリ波・テラヘルツ波を用いた新しい磁気記録方式「ミリ波磁気記録」の開発に成功した(ニュースリリース)。

磁気記録は,容量を向上させるために磁性粒子のサイズを小さくすると磁化の熱不安定性が増し(超常磁性問題),これを回避するために磁気異方性を大きくすると,今度は磁気記録ヘッドでの書き込みができなくなる“磁気記録トリレンマ”と呼ばれる問題がある。

研究グループは,磁気テープ用の新しい磁気記録方式の提唱を主眼として,イプシロン酸化鉄(ε-Fe0.23(TiCo)0.05Fe1.67O3)ナノ粒子を,ガラス基板上に塗布した磁性フィルムを用いた。また,テラヘルツ波を光源とした高強度のミリ波発生装置を開発すると共に,ミリ波集光リングを磁性フィルムの表面に作製し,集光ミリ波を照射した。

その結果,高強度ミリ波磁場により磁化反転が生じたことが明らかとなった。このようなミリ波照射による恒久的な磁極反転は世界で初めての観測だという。

また,もう一つの検証実験として,シリコンウエハーの上にミリ波集光リングを作製し,磁性フィルムと重ね合わせた状態でテラヘルツ波を照射した場合でも,磁性フィルム上のリング周辺の最もミリ波集光度が高い部分に磁化反転が観測された。シミュレーションを行なった結果,共鳴周波数のミリ波が照射されると,瞬時に磁化が反転することが示唆された。

ミリ波磁気記録技術により,磁気記録トリレンマ問題を解決することができるため,磁性粒子のサイズを小さくして,記録容量を増加させることが可能。ミリ波の遷移エネルギーは可視光の遷移エネルギーの約1/5000であるため光加熱効果の影響を避けることができるため,有機樹脂をベースフィルムとする磁気テープにとって,ミリ波磁気記録は極めて有効な記録方式になるとしている。

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