大阪府立大学の研究グループは,測定装置のリガクおよび化学品のMORESCOとの共同研究によって,非破壊検査法のひとつである3次元X線イメージングの手法を駆使して,ガラス板や金属板上の多孔質エポキシモノリス層に熱可塑性樹脂を熱溶着した接合試験片の内部および界面構造を直接観察することに成功した(ニュースリリース)。
近年,自動車や航空機を含む多くの分野で材料の軽量化やマルチマテリアル化が進んでおり,様々な材料を組み合わせて突出した機能を発揮させる複合化技術が進展し,金属―樹脂接合に代表される異種材料間の接着接合のニーズが急増し,実用化に向けた応用研究が盛んに行なわれている。
研究グループは,金属と樹脂を接合(異種材料接合)する際に,多孔質の有機ポリマー材料であるエポキシモノリス層を界面に介在させると,金属と樹脂を直接接合する場合に比べて,接合強度が2~10倍向上することを見出している。さらに,樹脂強度を高くすると接合強度が増大することが明らかにされ,エンジニアプラスチックを用いた高強度接合に向けての取り組みが進んでいる。
しかしながら,モノリス表面と樹脂間での接合強度が増すほど,エポキシモノリスと被着体(ガラスや金属)との界面の相互作用を高めて界面強度を高強度化する必要があった。そのためには,まず界面構造を正確に知ることが重要だが,これまでは断面を観察して界面構造全体を類推する間接的な方法しか存在していなかった。
今回,非破壊分析法のひとつである3次元X線イメージングの手法を適用することによって,多孔質材料であるエポキシモノリスの内部構造はもちろんのこと,ガラスとエポキシモノリスの接合界面の詳細な構造を,サンプルを破壊することなく,接合に用いられている条件と同一のままの状態で観察することに成功した。
精密な観察を行なうために,微小で平坦な表面を観察できる特殊ステージを設計し,そのステージ上に接合界面を形成してX線観察を行なった。その結果,シランカップリング剤およびホスフィンカップリング剤などによるガラスや金属の表面修飾が,異種材料接合の高強度化に有効に作用していることを実証することができたという。
研究グループは,今回の成果について,これら異種材料接合に関する研究開発を一気に加速すると同時に,今後の革新的な接着・接合手法の応用開発や実用化に繋がっていくことが期待されるとしている。