高健大ら,記憶タンパク質をライブイメージング

高崎健康福祉大学,電気通信大学,富山大学の研究グループは,ホタルの発光酵素を利用して,記憶関連タンパク質であるBDNF(Brain-derived neurotrophic factor:脳由来神経栄養因子)の発現が脳内で増加する様子を生きたマウスで可視化することに成功した(ニュースリリース)。

BDNFは,記憶学習などの高次の脳機能発現に必要不可欠なタンパク質で,アルツハイマー病などの神経変性疾患やうつ病などの精神疾患において、BDNF発現の低下が多数報告されている。しかし,脳内BDNF発現が低下することがこれら脳・神経系の疾患の発症原因なのか,それとも疾患による脳機能低下の結果として低下するのかは明確ではない。

そこで,生体脳内におけるBDNF発現変化を可視化するため,ホタルの発光酵素であるルシフェラーゼを利用した遺伝子改変マウス「BDNF-Lucマウス」を作出した。ホタルルシフェラーゼは,天然の基質であるd-ルシフェリンと反応すると黄緑色の発光を生じる。BDNF-Lucマウスは,BDNF発現が増加するとルシフェラーゼが増加する。

以前の研究において,BDNF-Lucマウスにd-ルシフェリンを投与した結果,発光は検出されたが,BDNFは特に脳で高く発現しているにもかかわらず,脳の位置で発光が強く検出されなかった。この原因として,ルシフェリンの体内分布の問題や発光の組織透過性の問題が考えられた。そこで今回,ホタルルシフェラーゼの人工基質を用いて,生きたまま非侵襲的に脳内BDNF発現変化を可視化できるか検討した。

研究では,近赤外の発光が生じるホタルルシフェラーゼの人工基質を用いて同様に解析を行なった。近赤外の発光は,ヘモグロビンなどの影響を受けにくく,組織透過性の改善が期待されるという。その結果,人工基質の一つである「TokeOni(別名;アカルミネ塩酸塩)」を用いた場合,大脳領域を含む脳に由来する発光を検出した。この方法では,マウスを除毛するだけで非侵襲的に脳からの発光が検出できる。

次に,TokeOniを用いて脳内でBDNF発現が増加する様子を可視化可能か確認したところ,近赤外の発光を利用することにより,生きたマウスを用いて非侵襲的に脳内BDNF発現の増加の様子を可視化できた。これにより,脳内BDNFが増加(もしくは低下)した後,記憶学習がどのように変化するのかを,直接的に解析することが可能。将来的には,アルツハイマー病など,新たな認知症治療戦略の構築に役立つかもしれないとしている。

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