阪大ら,光制御高速マイクロアクチュエータを開発


大阪大学,イタリア学術会議,伊ジェノバ大学は,二酸化バナジウムの構造相転移を利用したマイクロアクチュエータを開発,ナノレベル精密変位制御・高速動作を世界で初めて実現した(ニュースリリース)。

これまで,MEMS技術によるマイクロアクチュエータの研究開発は,変位原理として静電引力を利用した静電効果,電圧によるピエゾ効果,磁石による磁歪効果,熱による伸縮変化を中心に研究されてきた。しかし,変位に要する時間がかかり履歴現象も生じることから,精密制御・高速動作には困難な原理で制御されてきた。

研究グループは,大きな結晶構造変化を引き起こす酸化物結晶の構造相変化を原理としたアクチュエータの開発に取り組み,長年来酸化物MEMS技術を磨いてきた。今回,70℃付近で結晶構造相変化を起こす二酸化バナジウムを用いた酸化物MEMS技術によりV字ブリッジ構造をデザインし,弱いパルスレーザー光照射により,最大2KHzの高速で数百nmのリニア変位を起こすマイクロアクチュエータを実現した。

今回の成果は,酸化物の結晶構造変化を利用することでナノレベルの精密な変位制御と,MEMSデザインを施すことでリニア変位を起こすことを証明したことにある。これは,結晶構造変化とMEMSデザインの両者を活用しナノレベルでの高速動作アクチュエータを動作実証した世界で初めての例となるという。

今回の成果は新原理とMEMS技術の両輪によって2kHz高速動作,ナノ変位制御がシンプルに行なえることが最大の成果で,アクチュエータ技術の発展をもたらすことが期待される。研究グループは今後,さらにMEMSデザインを施すことで,回転変位,多軸変位ができる高機能マイクロアクチュエータの開発が進み,マイクロロボティクスへの応用が期待されるとしている。

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