北里大学は,遠隔から飛来するγ線の強度分布を高感度で撮影できる「コンプトンカメラ法」において,画質を大幅に向上させることが可能な手法を世界で初めて提案・実証した(ニュースリリース)。
γ線イメージング技術において,「コンプトンカメラ技術」は高感度で撮影可能な唯一の方法であり,開発が盛んに行なわれている。しかし,コンプトンカメラ法で得られるγ線画像は,γ線源が存在しない方向に疑似ピーク(ゴースト)が出現してしまうため,真のγ線強度を表す画像の取得が原理的に困難と考えられてきた。
研究グループは,X線CT,SPECT,PET などの断層撮像装置の画像再構成法として用いられている「フィルタ逆投影法」の原理をコンプトンカメラ法に簡易的に応用する手法を初めて提案し,実際のコンプトンカメラで得られたγ線画像において,画像の鮮鋭化や,バックグラウンド領域をゼロレベルに抑えることが可能であることを実証した。一方で,ゴースト成分の除去が大きな課題として残っていた。
そこで今回,撮影時に検出器を回転させながらデータ収集し,フィルタ逆投影法を応用した先の提案手法で画像再構成を行なうことで,ゴーストのない優れたγ線画像の取得が可能であることを世界で初めて提案・実証した。
今回の提案手法は,コンプトンカメラ法においてこれまで困難とされてきたシフト不変なγ線画像の取得が容易に可能(言い換えると,シフト不変な線形システムの実現が可能)であることを意味しているという。
今回実証したタイプのコンプトンカメラは,福島フィールドや東日本全体における0.23~1μSv/hの低線量放射能汚染箇所の可視化を大幅に容易にすることが期待される。
また,病院や加速器施設における放射線管理区域では,電離箱をベースとしたエリアモニタを施設内に設置することで,「検出器位置での空間線量の定点観測データ」を放射線管理指標としているが,この手法を適用することで,今後は,「イメージング機能を備えたエリアモニタ」の実現に期待がかかるとする。
更に,SPECT,PETに代わる次世代の核医学診断装置として,コンプトンカメラ法をベースとした検出器開発の基礎研究が国内外で盛んに行なわれているが,この手法で提案するように,ダイナミックデータ収集機能を備えることで画質向上が大いに期待されるとしている。