東北大,超伝導体内の電流を光で操ることに成功

東北大学は,有機超伝導体に極めて時間幅の短い光パルスを照射した瞬間,向きの定まった電流が生じることを発見した(ニュースリリース)。

ペタヘルツの超高周波電場である光は,現在のギガヘルツ駆動エレクトロニクスを飛躍的に高速化(高周波化)するポテンシャルを秘めている。しかし,振動電場である光によって,電子回路の基本動作である電流を一方向へ流すこと(電子を動かす方向を決めること)はできなかった。

研究では,パルス幅およそ6fs(通信波長帯の近赤外光では電場振動の1周期に対応する時間)の極限的な短パルス光を用いることによって,散乱のない電子の加速,つまり,光による向きの定まった電流の発生に挑戦した。

[k-(BEDT-TTF)2Cu[N(CN)2]Br]は,よく知られた有機分子の層状構造からなる有機超伝導体。この物質には「向き」,つまり対称性の破れはない。6fsの近赤外光を照射すると,入射光(基本波)のエネルギー(0.75eV=1653nm)の2倍の光子エネルギーに第二高調波発生(SHG)が観測される。

しかし,この物質には「対称性の破れ」はないので,SHGなどの偶数次の高調波は本来発生しない。有機物質では電子の散乱時間は40fs程度であり,電場の印加時間(=パルス幅6fs)の方が短いことを考えれば,電子が散乱なく加速され(一方向に電流が流れ),SHGが生じた可能性があるという。

この散乱の無い電子加速による電流は,電場波形の変化に極めて敏感。研究では,光の振動の1サイクルよりもはるかに短い時間精度(~100アト秒)で光の電場波形を制御する技術,キャリアエンベロープ位相(Career Envelope Phase:CEP)の操作を用いて検証した。CEP操作は,光周波数コムとも関係する先端光技術。

研究グループは実際に,有機超伝導体においてCEPを変化させてSHGの強度を測定し,SHGのCEP依存性は,SHGが散乱のない電子の加速による電流を起源としていることの証拠であることを示し,有機超伝導体に極めて時間幅の短い光パルスを照射した瞬間,向きの定まった電流が生じることを発見した。

この結果は,オームの法則に従わない電子の加速が超伝導体中で起きていることを示す。今後,銅酸化物や鉄ヒ素化合物などの高温超伝導の機構解明や,ペタヘルツデバイスへの応用に役立つことが期待されるとしている。

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