東京女子医科大学とNTTドコモは,商用第5世代移動通信方式(商用5G)を活用した遠隔手術支援システム,及び移動型スマート治療室「SCOT」を用いた実証実験を,本年2020年10月に行なう(ニュースリリース)。
「SCOT」は,IoT技術を活用して各種医療機器・設備を連携させるスマート治療室。東京女子医科大にあるスマート治療室と,専門医がいる「戦略デスク」を商用5Gと「ドコモオープンイノベーションクラウド」で接続。スマート治療室内で脳外科手術を行なう執刀医の手元映像や,4K外視鏡の高精細映像などの大容量のデータを,専門医のいる「戦略デスク」へリアルタイムで送る。
遠隔の専門医が手術の状況を俯瞰的に確認し,手術時の指導や支援を行なう。実証実験を通じてシステムの有用性を確認し,先進医療の現場での活用をめざして検討を進める。
データの伝送には,ドコモのクラウドサービス「ドコモオープンイノベーションクラウド」を使用する。これにより手術のデータを高セキュリティに,また大容量データを低遅延で伝送することが可能。スマート治療室内の複数の医療機器データ管理は,医療情報統合プラットフォームの「OPeLiNK(オペリンク)」を活用する。SCOT内の4K外視鏡はオリンパス製のものを使用し,医療情報統合プラットフォームの運営をOPExPARKが行なう。
東京女子医大とドコモは2019年11月に東京女子医大が保有するスマート治療室で5Gを介した遠隔手術支援に関する共同実証実験を行なう覚書を締結している。この覚書における取り組みの一環として,日本医療研究開発機構(AMED)からの採択案件である「8K等高精細映像データ利活用研究事業」の事業課題名「8Kスーパーハイビジョン技術を用いた新しい遠隔手術支援型内視鏡(硬性鏡)手術システムの開発と高精細映像データの利活用に関する研究開発(事業機関:国立がん研究センター)」の枠組みのもとで実証実験を行なう。
これにより,緊急の脳外科手術などで熟練医が不在の時や感染症などで入室可能な医療スタッフが限定された状況でも遠隔から手術支援を行なうことが可能となる。社会的問題となっている高度医療従事者不足に伴う医師の負担増大や地域医療における医師偏在などの課題解決をめざすとしている。