京都大学の研究グループは,酸化チタン光触媒を用いたアンモニア水を窒素源とする第一級アミンの新しい合成方法を開発した(ニュースリリース)。
アンモニア(NH3)の水素を炭素基で置換した化合物である第一級アミンは,医薬・農薬・染料などの様々な化合物を合成する際に利用される重要な化合物。これを合成するためにはハロゲン化物を使ったり多段階のプロセスが必要だったりと,いずれも複雑かつ有害,あるいは危険な原料を使う必要がある。
アルケンにアミンを付加させるヒドロアミノ化反応は原理的に無駄な廃棄物を生成しない原子効率の高い反応だが,この反応で第一級アミンを得るにはアミンの代わりにアンモニアを使う必要があり,従来法では非常に困難だった。
今回開発した手法は,少量の金属を添加した酸化チタン光触媒を用い,入手が容易で取り扱いやすいアンモニア水を使って,アルケンにアンモニアを直接付加させることにより,高効率かつ選択的に第一級アミンを合成できる。しかも,合成価値の高い有機鎖の末端にアミノ基を有する第一級アミンを高い選択率で得ることができる。
研究グループは,先にヒントとなる複数の光触媒反応(アルケンの反マルコフニコフ的水和反応,アンモニアの分解反応,芳香環のアミノ化反応)を見出していたので,今回の研究では,それらの知見とこれまで培ってきたノウハウにより,アンモニア水による簡単かつ高効率な光触媒的ヒドロアミノ化反応を見した。ここでは特に,適した溶媒と反応条件を見出したことが重要だったという。
この光触媒反応では,ラジカル中間体を経由する反応機構で進行するために興味深い選択性が発現する点が重要なポイントとなる。通常の方法ではマルコフニコフ則と呼ばれるルールに従った化合物が優先的に得られるが,この手法では全く逆の選択性(反マルコフニコフ則)で生成物が得られる。加えて,反マルコフニコフ則に従った生成物は分子の末端部分にアミノ基をもつことになる。
この末端にアミノ基を持つ第一級アミンは,さらなる新規化合物の合成や新規化学合成ルートの開発にも大いに貢献できるため,合成化学的価値が高いことも注目すべき点だという。また,温和な条件で,入手が容易で取り扱いやすいアンモニア水を使って合成できる点も,大きな利点となるとする。
この方法の確立により,様々な第一級アミンを容易に得られるようになったので,これらをもとにした合成化学全般を発展させることになる。また,光触媒の持つ高い可能性を示すことができたので,光触媒による新規化学反応の開発が活性化されるとしている。