東大ら,レーザーで相転移「悪魔の階段」を解明

東京大学,日本原子力研究開発機構,理化学研究所の研究グループは,セリウム・アンチモンが示す「悪魔の階段」の複雑な相転移現象において,強い相関状態を受け入れることと引き換えに生じる伝導電子の特殊な振る舞いを解明した(ニュースリリース)。

膨大な数がある磁性体の中でも,セリウム・アンチモンは最も複雑で磁気相転移を示す。通常の磁性体と同様に,結晶中でスピンが配列するが,わずか10ケルビンの狭い温度範囲でスピンの長周期配列を7回も移り変える逐次的な相転移を示す。

さらに,この特殊な相転移現象の下で選択的に形成されるスピン配列は,通常の磁性体では実現しえないほどの長い周期(20倍以上の周期)になる。この異様なスピン配列の相転移現象は,その複雑さから「悪魔の階段」として呼ばれ,1977年に観測された。これまでに詳細なスピン配列が調べられてきたが,「悪魔の階段」を引き起こすメカニズムは40年以上も謎だった。

今回,研究グループは,セリウム・アンチモンの「悪魔の階段」で形成されるスピン配列だけでなく,伝導電子の振る舞いを超高精度で調べるために,超高分解能レーザー光電子分光と偏光顕微鏡を利用した。

セリウム・アンチモンでは,配列したスピンの向きが異なる磁気ドメインが結晶内でばらばらに分布するが,この研究では,それを空間的に選り分けた顕微分光測定を行なった。

その結果,電気伝導を担う電子と磁性を担う局在スピンが強く相関していることに対応して,配列したスピンの方向に従って伝導電子の電子構造が大きく異なっていることがわかった。

また,局在スピンとの強い相関を受け入れて束縛状態に陥ることと引き換えに,自由に動き回る伝導電子の運動状態を壊した擬ギャップ状態を形成することでエネルギー利得を得て長周期のスピン配列を安定させていることを明らかにした。

さらに,温度に対して長周期スピン配列が次々と変化していく「悪魔の階段」の転移現象を,超精密な温度制御によって1つ1つ追跡しながら詳細に測定することで,スピン配列の転移に従って「擬ギャップ状態」が変化していることがわかった。

「悪魔の階段」を引き起こす長周期でスピンを整列させるメカニズムは40年以上も謎だったが,局在スピンとの強い相互作用を受け入れて束縛状態に陥ることと引き換えに,伝導電子が形成する「擬ギャップ状態」が要因となっていることを突きとめた。

この研究で明らかにした電子とスピンの強い相関は,スピン配列で伝導電子を制御して磁気メモリなどの動作原理としても機能するため,スピントロニクス磁性材料設計への展開が期待できるとしている。

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