筑波大学,京都大学,仏パリ高等師範学校の研究グループは,超伝導体テラヘルツ光源の同期現象の観測に成功した(ニュースリリース)。
テラヘルツ帯の電磁波であるテラヘルツ波を使った次世代技術は,化学分析,医学・薬学,環境計測など幅広い用途での応用が期待されている。その中で,筑波大学と米アルゴンヌ国立研究所の研究によって発明された超伝導体テラヘルツ光源が最近注目されている。
この光源の実用化にはテラヘルツ波の高出力化が必須とされているが,これまでの研究では高強度で位相のそろったフォトンが放射される仕組みは明らかにされていなかった。
研究グループは,基板上に並べられた複数の光源が同期して高強度なフォトンを放射する現象に注目。今回,フォトンの偏波状態の観察に焦点を当てたことが,最大のブレークスルーとなった。
アクロマート波長板と呼ばれる偏波装置による精密測定で,巨視的なスケールで位相同期が起こる際には偏波状態に特徴的な変化が現れることを発見した。このことは,超伝導体プラズマ波とフォトンが結合することにより,高強度で位相がそろったフォトンが放出されることを示している。
さらに,超伝導体中に存在する超伝導プラズマ波を介して結合したフォトンの状態を量子力学的な手法で解析することにより,量子暗号通信の基盤要素である量子もつれ状態の実現可能性を示唆する結果も得られた。
この研究で得られた成果は,超伝導体中の特殊なプラズマ波を精密制御する技術に応用できる。また,次世代の高速無線通信や分光技術に有用とされるテラヘルツ波を高い効率で発振できる量子通信デバイスの創成につながることが期待されている。
高強度な超伝導テラヘルツ光源が実用化されれば,これまで半導体デバイスを中心に発展してきたテラヘルツ技術に革命的な進歩をもたらすことが予想されることから,今後の展開が注目されるとしている。